当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら。 星野リゾート代表・星野佳路がゲストを招いて話を聞く対談シリーズ。今回はねぶた師史上初の女性ねぶた師北村麻子さんと対談の1回目。
熱い6日間のためだけに1年かけて制作されるねぶた
星野 今日は「星野リゾート 青森屋」に来ていただきありがとうございます。このホテルでは、北村さんが手がけたねぶたをお祭りのショーで使わせてもらっていますし、オリジナルのねぶた制作も依頼するなど、お世話になっています。
北村 こちらこそです。ねぶたはお祭りが終わると解体してしまうので、こうして別のかたちで生かしていただけるのはありがたいです。
北村さんが手がけたオリジナルねぶた「どさ?湯さ!~嗚呼、極楽極楽~」
星野 すぐに解体してしまうんですか。
北村 そうなんです。青森って冬が長くて、夏はすごく熱気があるけどあっという間に終わるんですよね。ねぶたはそんな青森を現しているようで、儚さがあるのもいいと思っています。
星野 ねぶたは構想からどれくらいでできるものなんですか?
北村 1年がかりです。ねぶた祭は毎年8月2日〜7日なんですが、祭りが終わったら1か月くらいお休みして、その後すぐ次の年の構想に入る感じですね。
星野 ねぶた制作のスタッフは何人くらいいるんですか?
北村 紙貼りチームと、骨組みや色塗りをする制作チームに分かれていて、紙貼りチームは15人くらい、制作チームは4人くらいですね。
ねぶたの制作風景。オリジナルねぶたは、幅約1.8m、奥行き約1.8m、高さ約1.9mの山車となった
星野 そんなにいるんだ!すごいですね、20人チームだ。
北村 ねぶたは大きいものなので、一人だと大変なんです。
「女でもねぶた師になれると見せつけたかった」
星野 そもそも、ねぶた師にはどうやってなるんですか?
北村 私の場合は父がねぶた師なので、弟子入りしたかったんですが、真正面から「ねぶた師になりたい」と言っても、だめだと思って。
ねぶた師の師匠であり父の北村隆さんと
星野 それはどうしてですか?
北村 これまでにも何人か女性のお弟子さんはいたんですが、みなさん辞めてしまい、父のなかで「女はねぶた師になれない」という印象がついてしまったみたいなんです。真正面から「やりたい」と言えば断られると思ったので、父に黙って通ってみようと。少しずつ入り込んでいったら、向こうも拒絶できないじゃないですか(笑)
星野 お父さんのアトリエにってことですか?
北村 はい、父の制作の現場に通いました。3年くらいは何も教えてもらえなくて悔しい思いをしましたが、父や兄弟子がやっていることを目で盗んで、少しずつ覚えて、技術を磨いていって。「女でもこれくらいできるんだぞ」というところを見せていったら、徐々に対応が変わっていきました。
星野 「ねぶた師になりたい」と言葉には表さなくても、毎日通っていると何となくわかりそうですよね。お父さんから「ねぶた師になりたいのか」とは聞かれなかったんですか。
父と娘の関係性に興味津々の星野
北村 それが全く聞かれなかったんですよね。
星野 そうなんだ、面白いお父さんですね。頑固な感じ。けど、嬉しかったんじゃないですか。
北村 いや、どうでしょう(笑)。私、小さいときから飽きっぽかったので、心配だったみたいですね。
星野 どのタイミングでねぶた師になりたいとお父さんに伝えたんですか?
北村 実は、ねぶた師になりたいとは言っていないんですよ。「勉強のために小さいねぶたを自主制作したいから教えてほしい」とお願いしたんですが、そのときは嫌がらずに、すごく丁寧に教えてくれましたね。
星野 そのとき、きっとお父さんは、娘がねぶた師になりたいんだろうと感じたんでしょうね。
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