「いいな」とは絶対に言ってくれないライバルの父と娘
星野 ねぶたでどの場面を描くかは、どうやって決めるんですか?
北村 私の場合は、使いたい色や描きたい動物から先に決めて、合う場面を探します。物語から入ってしまうと、ぱっと見たときのインパクトが出ないかなと思ってしまって。見る人って、物語のことをそんなに知らなくても、ぱっと見たときの印象で良し悪しを感じると思うんですよね。
星野 その考え方は、画家や彫刻家と一緒かもしれないですね。
北村 個人的には、ねぶたってサプライズ的な要素がなきゃいけないと思うんです。「うわぁ、今年はこうきたか」というような驚きが。なので、毎年違う印象を与えられるようなものをつくりたいです。
対談が行われたのは、青森県内の4つのお祭りが一堂に会するショー会場「みちのく祭りや」
星野 物語のほうから入るねぶた師さんもいらっしゃるんですか。
北村 ほとんどが物語から入られますね。
星野 お父さんはどちらからなんですか?
北村 うーん、どうなんだろう、聞いたことないですね……。
星野 次は何をつくるのか、相談とかはしないんですか?
北村 しないですね。私が聞いても絶対に教えてくれないです(笑)。父も私のことをすごくライバル視しているんですよ。
お互いに、その年のねぶたの構想などを明かすことはないという父と娘
星野 そうなんですか。お父さんは何歳ですか。
北村 うちの父は74歳です。
星野 いまだにライバル視しているんですね。若い証拠だな。
北村 そうですね。まだまだ若い者には負けない。
星野 娘の作品に一目置いているのかもしれないですね。そうすると、ライバル視したくなる気持ちもわかる気がします。
北村 そうだったら嬉しいです。
星野 できあがったとき、北村さんの作品に対して、評価とかコメントはあるんですか? 「今年はいいな」とか。
北村 「いいな」とは絶対に言ってくれないです(笑)。だめだったときは言われることがあって、ちょっとイラッとするんですけど、時間が経つと「こういう意味だったんだな」と納得できることも多いです。
半纏をスタイリッシュに着こなす北村さん。ふいに見せる笑顔が印象的だった
星野 褒めてくれたことはあるんですか?
北村 褒めてくれたことはないと思います。でも、父の態度を見て、「今年は多分いいと思ってくれているんだな」って勝手に汲みとる感じです。
星野 職人ですね、褒めてくれないお父さん。だけど、いいと思っているのはばれちゃう。なんかかわいいですね。
星野は北村さんとお父さんとのエピソードがお気に入りの様子
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