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経営者は市場価値のズレになかなか気付けない



もちろん、誤って本当の市場価値よりも低い賃金設定になっていることもあるかもしれません。その場合は、気づかずにいれば、どんどん人が流出することでしょう。

経営者は、優秀な社員が転職をしてしまったり、人が採用できなくなったりすることによって、ようやく自社の報酬水準と市場価値とのズレがわかるというわけです。

この場合、悪いのは誰でしょう。経営者が社員それぞれの市場価値をわかって、敏感に報酬水準を変えていければ理想ですが、人間には認知限界がありますので、なかなかそれは難しい。

ですから、管理職のみなさんが、この市場価値のズレを経営者にきちんと伝えなくてはならないと思います。


誤解や無知を解決するのは管理職の仕事だが

質問者は良かれと思って「仕事のやりがいを伝える」ことで、給与への不満を和らげようとしているのでしょう。

部下の不満をそのまま経営者にあげていてはキリがないので、「自分のところで抑えておこう」と思うのもわかる気がします。ふつうのマネジメント問題であればその対応でよいと思います。

マネジメント問題は多くの場合、誤解や無知によって生じています。ですから、管理職がコミュニケーションの潤滑油となって、相互理解を進めたり、必要な情報を経営者にインプットしたりすることで解消するべきです。

しかし、報酬水準は客観的なものであり、誤解や無知による問題とは違うのではないでしょうか。


市場価値とのズレは一刻も早く伝えるべき

ですから、報酬水準への不満を現場で抑えてしまうのは「動機は善だが、結果は悪」です。この人材流動性の高い時代に「やりがい」だけで人を縛ることはなかなかできません。

市場価値が低い人材が誤解や無知で不満を言っているのであれば、ある意味スルーしても問題ないのでしょうが(結局、転職できないので)、「転職しようと思えばできてしまうような最前線の優秀な人材の報酬が市場価値とズレている」という情報は、現場でなんとかやりすごしている場合ではなく、本来一刻も早く経営者に上げるべき事象ではないかと思うのです。

その判断が正しければ、まともな経営者なら改善に動くのではないでしょうか。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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