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2023.06.12

ライフ

「職場での服装を若手に注意したい」と思うマネージャーが、ダメ出し前に明確にすべきこと


「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……

本日の相談者:IT系企業・39歳
「私の職場では、夏場に向けオフィスカジュアルが推奨されています。

しかし、やたら肌の露出が多い女性や短パンサンダルの男性など、さすがに職場でこれは、と思ってしまうような服装の若手がいます。

本人がさりげなく気づくような注意の仕方はありませんか?」。
アドバイスしてくれるのは……

そわっち(曽和利光さん)
1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。 

ふつうに注意してはどうでしょうか

まず、今回の質問については「本人がさりげなく気づく」ことがどうして必要なのかがややわかりません。
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会社は自己表現の場とかではなく仕事をする場なので、メンバーの服装が仕事に対してマイナスの影響を与える可能性があれば、「そんな服装はしてきてはいけない」と、ふつうに注意・指導すればよいのではないでしょうか。

日本人はネガティブフィードバック(要は「ダメ出し」)するのが苦手というか嫌いな人が多いので、それから逃げているのかもしれません。

でも、ネガティブフィードバックはマネージャーや先輩社員の重要な役割のひとつです。嫌でもやらなくてはいけません。直言してしまいましょう。


ルールが曖昧だと注意しにくいのは確か

とは言っても、確かにドレスコードのような曖昧でセンシティブなものについて、「言いにくい」というのはわかります。

完全にラインを踏み外しているようなエキセントリックな服装であれば注意しやすいですが、おそらくその若手の服装は、微妙な合否ライン上にあるのでしょうね。

また、そんな意図はなくとも、特に異性のファッションについて何かを言うこと自体がセクハラ的な色合いを帯びる可能性もあります。

ルールが曖昧な環境で注意をすると、その場の思いつき、恣意的な指示だと思われてしまうこともあるでしょう。だから「言いにくい」のはある程度は仕方がないようにも思えます。


本当にドレスコードは明確化できないのか



しかし、問いたいのは、本当にドレスコードは明確化、言語化できないのかということです。私の経験から申し上げますと「意外とそうでもない」です。

以前、私は不動産会社の人事責任者をしていたことがあるのですが、入社後、最初にした仕事はこのドレスコードの明確化でした。

社長から「最近、服装が乱れているような気がするので、ルールを明確化して統制してほしい」とオーダーを受けました。

「何がどう乱れているのか」について明言はありませんでしたが、社長としては「ともかく今の状態はおかしい」「成果にも影響が出るのではないかと思う」ということでした。それは確信に満ちていました。
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経営者の曖昧な指示を明確化するのが仕事

こういうことはよくあります。

経営者や現場のハイパフォーマー(高業績者)は、直感的な人が多く、判断は的確なのですが、「なぜ、そうなのか」を具体的に明示することができない(しない)人がたくさんいます。

そもそも「プロ」とは無意識でもスラスラと何かができる人のことであり、いちいち意識的にモノを考えていない場合もあります(英語ネイティブの人が英文法を意識しながら話しているわけがありません)。

ですから、彼らを支える参謀の立場にいる人(経営幹部や管理職やスタッフ部門)は、彼らの直感を言葉にして明確化していくのが仕事のひとつなのです。
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仮説をぶつけて、試行錯誤して明らかにしていく

ですから、当時の私は、ドレスコードというものがどういうもので、ビジネスシーンにおいて規定すべきところはどういう領域(ネクタイ有無、襟の形、シャツの色……)があって、それぞれに選択肢として何があるのかを洗い出しました。

そして、現状の社員の着ている服装を横目で見ながら、社長が頭の中にぼんやりと設定している「合否ライン」を推定していきました。

そして、「こういうことですかね」「ちがう」「ではこういうことでしょうか」「それはそう。あれはちがう」……と何度かやり取りを続け、最終的に「そう、こういうルールがいい」となりました。

仮説をぶつけ続ければ、明らかになっていくのです。


直感的な判断の背景にもたいてい理由がある



また、仮説をぶつけていく過程の中で、例えば「なぜ白いシャツでないといけないのですか?」と質問をしていくことで、社長からルールの背景にある理由についても聞き出すことができました。

「不動産の仕事は清潔感から来る信頼感が第一で、それを象徴するものが白いシャツだから」「会社として統一感が取れていることも信頼につながる。全社で統一するなら白がしやすい」等々です。

このように、「直感的」「無意識的」な考えの裏にも、それが確信に基づくものであれば、たいていの場合、論理的な理由があるのです。

「直感的」「無意識的」というのは「適当」「でたらめ」ということではないのです。


自分の無意識のルールを引き出し、明確化する

これは、経営者と参謀の間のやり取りの例でしたが、今回の場合は、これを自分で自問自答してみてはどうかということです。

「さすがに職場でこれは」と思う服装とは、一体どんな服装なのでしょうか。どこを見てそう思ったのか、どこまでなら許されるのか、線引きはどこでできるのかを、いろいろな例を見ながら考えるのです。

そうすると、自分の無意識の中に存在している、なんらかのルールが見えてくるはずです。ルールやその背景が言葉にできれば、あとは、冒頭に戻りますが、率直に注意するだけです。

言葉にできれば納得度も高まるでしょうから、自信を持って、注意・指導をしてあげてください。
グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp

曽和利光=文

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