肌触りも耳障りも素敵なオーガニックコットン。店頭で見かけたり手に取ったりする機会は増えたが、その真価をちゃんと考えたことは意外に少ない。
そこに誰よりも真剣に向き合っているのは、やはりあのパタゴニアだろう。動き出しは早く、1996年にはすべての綿製品をオーガニックコットンに置き換えている。
そこまでこだわる背景には、農家の短すぎる平均寿命や地球の気候変動といった深刻な問題が潜んでいるからだという。
【写真15点】「パタゴニア のオーガニックコットンアイテム」の詳細写真をチェック オーガニックコットンで気候変動に向き合う
パタゴニアマーケティング部の加藤 学さん
「オーガニックコットンには、気候変動を止められる可能性があるんです」。
そう話すのはパタゴニアマーケティング部の加藤 学さんだ。
「パタゴニアは1996年にすべての綿製品をオーガニックコットンに置き換えましたが、2020年からはネクストステップとなる『リジェネラティブ・オーガニック・コットン(RO)』の製品化に取り組んでいます」。
リジェネラティブ・オーガニックとは、化学肥料や農薬、GMO種子は使用しないオーガニック認証をベースに、土をなるべく耕さないなど土壌の健康や、動物福祉、社会公平性に配慮し栽培する農法のこと。
大気中の二酸化炭素を土に閉じ込めることが気候変動の抑制に効果的だと言われており、オーガニックの世界最高水準となる「RO認証」も制定した。
裏面にプリントされた「Regenerative Organic」の文字。
「サステナブルは『維持』や『持続』という意味ですが、リジェネラティブは『再生する』というさらに強力なもので、RO農法は”環境再生型農法”と言えます。
すべての農地をRO農地に置き換えれば、気候変動を止められる可能性があると言われていて、パタゴニアの製品にはすでに2200以上のRO農家に参加してもらっています」。
オーガニックコットン農家を増やすための戦略
だが、2200の農家がいてもまだまだ足りない。
「天然素材だから誰もが安心だと思っていたコットンですが、実はすさまじい量の農薬が使われています。綿栽培に使われる農地面積はアメリカ国土のたった1%にも関わらず、使用される農薬は全体の10%というデータもあります。
綿の生産地として有名なのはインドですが、農家の平均寿命は30代半ば。生物や土壌、人体も壊す産業なんです」。
世界の綿の流通生産量のうち、オーガニックコットンは全体の約1%に過ぎない。オーガニックコットンを生産する農家を増やすためにパタゴニアが始めたのが、「コットン・イン・コンバージョン」の製品化だ。
「農薬を使う綿の生産から、農薬を使わないオーガニックコットンに切り替えても、認証を受けるまでには3年という月日が必要なんです。
オーガニックと同じ手法で生産するわけですから、当然、コストはかかります。でも、認証を受けるまでの3年間は”オーガニック”を謳えない分、低い単価で買い取られるため、農家の収入は厳しくなってしまいます。
農家がオーガニックへの移行を躊躇しなくていいように、パタゴニアは彼らから直接コットンを仕入れ、コットン・イン・コンバージョンとして製品化することで、しっかりお金が回るようにしているんです」。
「コットン・イン・コンバージョン」「オーガニックコットン」「リジェネラティブ・オーガニックコットン」の3つのバージンコットンを展開するパタゴニアだが、その違いは裏地にプリントされている。
「どの素材も見た目と手触りは変わらないので、着る分には違いはありません。でも、たとえば『コットン・イン・コンバージョン』とプリントされているなら、オーガニック認証を受けようとしている農家のコットンだということがわかります。
自分がすでに持っているものや購入するものをそういう視点で見てもらえればまた面白いと思います」。
パタゴニア50周年記念で初登場! ”綿素材”のバギーズ
現在、店頭に並ぶ創業50周年を記念した「ファンホッガーズコレクション」でも、「コットン・イン・コンバージョン」を採用したショーツとパンツを展開している。
なかでも、今回初めて綿素材で製品化したという無染色のバギーズが目を引く。
メンズ・ファンホッガーズ・ショーツ 6インチ1万450円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)
「これは『アンダイドナチュラル』といって染色していないバギーズで、コットンそのものの色が特徴です。ロゴもこれだけ白いタグになってるんですよ。
メンズラインではかなり珍しい色なので、バギーズ好きならコレクションに加えたいスペシャルな1枚になってると思います。コットンなので肌への摩擦が少なく、長時間履いていても気持ちがいいですよ」。
メンズ・ファンホッガーズ・パンツ1万4300円/パタゴニア(パタゴニア日本支社 カスタマーサービス 0800-8887-447)
環境かビジネスかの二択ではなく、環境もビジネスも取りに行く二刀流のパタゴニア。今年の夏も、たくさんお世話になりそうだ。
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