言葉③「中川家、陣内、コバが売れたら絶対やりたがらないことは何かを考えた」
Q:「獅子舞」「ふんどし」「サングラス」と独自の笑いで道を切り開いてきたわけですが、THE WORDWAYの読者の声を見ると「自分の強みが分からない」という人が少なくありません。たむらさんはどのようにスタイルをつくりあげていったのですか?
同期に中川家がいて、陣内(智則)がおって、コバ(ケンドーコバヤシ)がおって。この3人が、僕の中の目安なんですよ。中川家はもう完全に漫才師。だから、こことは戦えないじゃないですか、僕1人やし。陣、コバはピンなんですよ。
陣内、コバが先にバーンって売れて、陣内はネタやってた。コバもネタやってるけど、アイツはもうお笑い能力が高すぎるから、ここも太刀打ちできない。陣内がやってるネタって、MDが出てきた時で、めちゃくちゃ上手にやりよったんですよ。
だから、僕もツッコミで、陣もツッコミなんで、ツッコミ芸人のピンがやるネタとしたら、アレが最高峰で勝てない。「じゃあ、どうすんねん」ってなったときに、「コイツらが売れた時に、まず何やらへんねん」ってことを考えたんですよ。
Q:ライバルがいない場所を探したと?
そうです。コイツら売れたら「絶対ロケ行けへん」って言い出すやろなと思って。その時に、俺はコイツらがこういってくれてるんやったら、俺はもう一生ロケするぞって決めたんです。ロケは若手仕事と言うか、拘束時間も長いし、ギャラもスタジオに比べたら安いんですよ。でも、僕は「あ、コレええ隙間見つけたな」と思ってましたね。
Q:自分自身の状況と周囲の状況を客観視し、勝てる場所で戦うのはどのような世界にも通じる考え方だと思います。 僕ね、客観的に自分のことを見れるのは得意技やと思ってるんです。自分のお笑い能力もわかってるし、何が苦手、何が得意っていうのももちろんわかってる。
一番力を発揮できるのもロケや一般の人と絡めるとか、そんなんが一番良いって思ってて。なので、ピンになった時から、(視聴者が応募した悩みや疑問を一緒に解決する)探偵ナイトスクープはホンマに狙ってました。
だから、どの番組もレギュラーが決まったときって嬉しいんですけど、探偵ナイトスクープの探偵が決まったときは異次元でしたね、喜びが。
Q:いつくるか分からないチャンスに向けて日々努力を続ける人、たとえば悩んでいる後輩から相談を受けたら、どんなアドバイスをされますか? 僕は、「売れるためにどうしたらいいんですか」って聞いてきた瞬間に、もう売れへんなと思います。もちろん聞きたいんですよ。けどそれをグッと食いしばって、それなら「たむらさん、飯連れてってください」とか、そっちの方がいいと思いますね。僕もそうやったんで。
一緒に飲みに行って、ご飯食べに行って、そこで「あ、こういうことや、こういうタイミングで言ったらおもろいんや」とかを学べるんで。
売れる方法ってないんですよ、ただ、やること。好きなことを怠けずにやる。好きでずっといるって事かなと思います。あとはもう運ですよね。この世界、おもろいやついっぱい辞めてますもん。売れる人は、皆さんやっぱり運を持ってますよね。
Q:今後、たむらさんがアメリカで実現したいこと、50歳からの目標を教えてください。
ぶっちゃけると僕向こうで最初何もしないです。何もしなくて、もっともっとアメリカを知ろうと思ってます。その時に、もしかしたら好きなことが見つかってビジネスになるかもしれない。
外国ってやっぱり感覚違うじゃないですか。だから、そこで僕に何か刺激が与えられて、新たなアイデアが出てくるかもしれへんし。なので、決めて行かんとこうと思ってるんですよ。これが一番の本音です。
Q:今までの戦略を立てて、期限と目標を決めるスタイルとは真逆のやり方、生き方ですね。 そうですね。そうしたいなと思ってます。オリエンタルラジオのあっちゃんとか、キングコングの西野とか、アイツらボロ稼ぎしたわけじゃないですか。僕マジでそうじゃなくて、ホンマにアホやから、全部貯金が悪やと思って、全部投資したりとか、使ってるんですよ。
でもまぁ何とかなるかって。今はそんな感覚です。自分で決めれないスケジュールの中で生きてきた人間が、自分の好きなように時間を使える人生を今から楽しめるんやって思ってるんで、それを考えるとワクワクしてるし、1mmも不安ないんですよ。
Q:10年後、20年後、30年後、漠然とでもこうなったらいいなみたいなのはあるんですか? 大金持ちです(笑)。
Q:最後に、たむらさんが支えにしてきた言葉、自分自身を作ったような言葉があれば教えてください。 いつも僕が思ってるのは、尾崎豊さんが言った「自由じゃなきゃ意味がないんだ」っていう言葉。自由ってなくなるじゃないですか、本当に。大人になればなるほど。だから、知らん間に僕も、自由なくなってたんですよね。
でも好きなことしてこれたから何とも思わなかったのが、今回こうやって気づいて、「あ、自由を求めないともうおかしくなっちゃう」って思ったんでしょうね。本当に自由じゃなきゃ意味がないって。その言葉はずっと思ってます。
たむらけんじ 1973年5月4日、大阪府阪南市生まれ。高校卒業後に吉本興業に入る。高校の同級生コンビ「LaLaLa」でデビューしたが、99年に解散。その後はピン芸人として活動し、裸にふんどし、獅子舞姿で「ちゃ~」などのギャグを披露するピン芸人として活躍。「炭火焼肉たむら」などを経営する実業家でもある。愛称はたむけん。2021年に23年5月4日での「芸人引退」を示唆したが、22年12月に自身のYoutubeで撤回。50歳の誕生日で国内での活動を終え、アメリカ進出する。