特集「プロご指名の本命デニム」とは…… 逆輸入ブランドのパイオニアとしてその名を轟かせたポストオーバーオールズ。
ヴィンテージワークウェアを背景としたコレクションは多くのマニアから絶賛されてきたが、実はデニムだけは長らく作ってこなかった。しかし、最近になってそんな状況にも変化が。
デザイナー、大淵 毅さんの抱くデニム論に迫った。
大淵 毅●25歳で渡米し、1992年にポストオーバーオールズを設立。以降、アメリカンワークウェアを軸としたコレクションを展開し、日本だけでなく海外のバイヤーからも高い評価を獲得。2020年の帰国後も、世田谷にアトリエを構え精力的に新作を発表し続けている。
▶︎すべての写真を見る 神格化されていくヴィンテージへの違和感
アメリカンワークウェアを知り尽くした大淵さん。当然、若い頃からデニムには慣れ親しんできた。原点はやはり古着のリーバイス501である。
ただ、アメカジブームや古着シーンの成熟を最前線で見てきた男は、日に日に高騰していくヴィンテージデニムを一歩引いた目で見ていた。
「501は大好きだったし、ヴィンテージもずっとはいていました。とはいえ、日を追うごとに価値が青天井に上がっていくシーンに違和感も覚えていました。
赤ミミがどうだ、リベットがどうだ、ステッチがどうだ……と熱をあげて語られているのがちょっと不思議で。僕はそこにあまり価値を見い出せなかったんです」。
だが、デニム熱まで冷めたわけではない。むしろ胸に秘めたアツい想いが大淵さんをアメリカへと突き動かした。
「昔からアメリカの古い服だったりデニムがいいなと思っていました。ヴィンテージへの憧れというより、アイテムを通して見えるアメリカへの憧憬に近いですよね」。
渡米した大淵さんは現地で自らのブランドを設立し、ヴィンテージワークウェアをベースに服作りをスタート。しかし、意外にもデニムには手を出さずにいた。
「ジーンズはリーバイスがあるからいいや、って思っていたんです(笑)。でも、そうも言っていられない変化を感じました。
昔は気軽に手に取っていたデニムもヴィンテージになって価格が高騰して、今では『ずいぶん高価なものをはいてるね』なんて言われるようになっちゃったじゃないですか。
例えば、リーバイス501XX。僕はさほど価値のない時代から足を通していたので、憧れが強いわけでもない。だから、『もっと気軽にデニムをはきたいな』って思い始めたんですよね」。
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