英語と子供が好きだったのぞみさんは、シドニーで幼児英語インストラクターの資格を取る。日本でこれを活かした仕事に就ければという思いがあった。
「でも、帰国していざ調べてみると待遇やお給料があまりよくなくて。結局、留学カウンセラーの仕事に就いて、次に派遣でローソン広報室の事務の仕事をしました」。
しかし、好奇心旺盛なのぞみさんに内勤は向いていない。当時の部長がそのやる気を買ってくれ、実動部隊として外に出て行く広報業務に転身した。
「大手なのでPR業務も取材対応もすごく多いんです。私はプロダクト、サービス側の担当で、新商品が出るたびに各メディアを回って商品情報を説明したり、掲載の提案をしたりという日々。でも、ローソンは新しいことにどんどんチャレンジしていいという社風だったので、かなりやりがいがありました」。
真ん中2人が広報のイロハを叩き込んでくれたローソン広報室の先輩。
ところで、右端に写っている女性にご注目いただけないだろうか。彼女はのぞみさんと同時期にローソン広報室で働いていた市川千尋さん。のちに、のぞみさんを含む3人でworgを立ち上げた。
なぜ、のぞみさんに声をかけたんですか?
「こんなふわっとした見た目ですが、仕事に取り組む姿勢はめっちゃ真面目で、誰よりもストイック。たとえば、メディアへのお披露目会に20社集めようとなったら、必ず20社以上集めてきます。ピュアだけど根っこがしっかりしているから、心が枯れそうになっても、またすくすく育つんですよね」。
ローソンで切磋琢磨した仲だけにわかる人物像。
2019年、もうひとりのメンバーを加えて3人でworgを設立した。
3人目の五来未佑さん(左端)は第二の故郷とも言える富山県高岡市の街や職人の広報など、地域に根付いたPRを得意としている。
のぞみさんいわく、worgの強みはとにかくクライアントに入り込むこと。案件が決まると、まず社員へのインタビューで現場の意見をすくい取る。
代表と社員の間に思いの乖離がある場合は、それを埋めるところから提案する。そこからコミュニケーションの軸や広報戦略をつくり、提案して実証する。「メディアに掲載されたら終わり」というスタイルではないのだ。
「社員さんからは、『誰にも言ったことないんですけど』というプライベートの相談を受けることもあります。あとは、採用面接に立ち会ったり、周年パーティーの運営をしたり、イベントの司会をしたりと、worgの『広報』は多岐にわたります」。
これまで、印象的だったプロジェクトを教えてもらった。
「サステナブルなケータリングを提供しているクレイジーキッチンさんとのお仕事ですね。ふだんはBtoBのサービスなんですが、本来捨てられてしまう食材や規格外の野菜とかを使ったお弁当を特別に作り、一般の消費者向けに期間限定で販売しようという企画の広報を担当しました」。
代替肉や昆虫食をおいしく学べるこの弁当は「ミライ弁当」と名付けられ、都内のサステナブル関連のイベントで販売された。
下の写真の弁当は、左には鶏肉など現在食べられている食材、右には未来に主流になるかもしれない大豆ミートなどの代替食材でつくった料理が詰められており、現在と未来を比較できる仕組みになっている。
「3色そぼろご飯・唐揚げ・野菜のマリネ」。
「メディア各社に熱い思いを伝えたところ、テレビ各局、雑誌の取材依頼がたくさん来たんです。商品も販売開始2分で売り切れたのを見て、『よかったねー』と言いながらworgのメンバーとクレイジーキッチンの代表と抱き合いました」。
さらに、不動産の AI査定サービス「HowMa(ハウマ)」を提供するコラビットは、丸3年という長い付き合いだ。
メディアへの種まきを地道に続けた結果、ビジネス番組での代表インタビューとサービス紹介の露出を獲得。「HowMa」のユーザー登録もグンと伸びたそうだ。
コラビットのオフィスでテレビクルーのインタビューに答えるコラビット代表。
さて、大好きな海とともに育ったのぞみさんは、いまでも気分転換に湘南方面に足を運ぶ。お気に入りスポットは葉山にある「うみのホテル」のカフェ。
「仕事のアイデアを出したいとき、行き詰まったとき、振り返りをするときなどに訪れます。海を見ながらゆったりできるので最高です」。
三浦野菜を使った料理やクラフトビールも楽しめる。
必ず食べるという「三崎マグロのアヒポキボウル」。
最近は、葉山の海を見ながら運動をしたいとハンモックヨガにも挑戦した。利用したのはビーチハウス「Sunny Funny Days」。NY発祥のハンモックを使ったフィットネスのレッスンが受けられる。
「リラックス&自分の感情や体調と向き合う時間にしています」。
ちなみに、のぞみさんはお酒が大好き。
「ローソンのおつまみで毎日ワイン1本を飲み干す広報」としてテレビ番組の取材も受けている。酒飲みの聖地・野毛では、9時間かけて7軒を飲み歩いた。
ベロベロで店名は覚えていないというビアバー。
さて、取材もそろそろおしまいです。仕事に戻るんですか?
「いえ、これから創業メンバーとその家族で沖縄旅行です。空港に直行するので、今日は私も市川も子供を連れて来ています」。
おっと。
「YouTubeでアニメを見ているときは静かなので、取材のお邪魔にはならないかなと。2人とも、そこの部屋にいますよ」。
このあと「お菓子食べたい」と騒ぐ、かわいい子供たち。
記事公開の数日前に東京に戻ったというので、現地で撮った写真を送ってもらった。
名護市のブセナリゾートにて。
「1月からメンバーが4人増えたので、創業メンバーで『これまで頑張ったね』というねぎらい旅行です。子供を寝かせてから、創業までの思い出や苦労、失敗、楽しかったこと、会社の今後についてワインを飲みながら語り合いました」。
バックパッキングが好きなのぞみさんは、大学の卒業旅行でタイ、カンボジア、マレーシア、シンガポールを巡った。タイで会ったフランス人の若い男性もバックパッカーで、山に登ったりジャングルに入ったりと、すごく楽しんでいたそうだ。
「そんな彼から言われた言葉が、『Life is one time』。人生は一度きりだから、毎日楽しまなきゃ損だよ。だから僕は行きたいところに行くし、やりたいことをやる。たしかにと思いました。それ以来、随所でこの言葉を思い出します」。
ありがとうございます。では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
「Life is one time」。そう、人生は一度きり。
[取材協力]worghttps://worg.co.jp