「弊社の看板娘」とは…… 年が明けましたね。2023年最初の記事は「めで鯛」ということで、たい焼き専門店を訪れましょう。
向かったのは杉並区の阿佐谷パールセンター。毎年8月に開催される七夕まつりが有名だ。
▶︎すべての写真を見る JR阿佐ケ谷駅と東京メトロ南阿佐ケ谷駅を結ぶ全長約700mの商店街。
目指す店はアーケードのちょうど中ほどにある。
「たいやき ともえ庵」。
2011年に中野で創業し、2014年前からこの場所で営業している。この地では9年目とはいえ、商店街の中でもかなり大きな存在感を放っている。
「たいやきの開き」は店のオリジナル商品。
さて、中を覗かせていただきます。
看板娘、いらっしゃいました。
ご登場いただきましょう。
「よろしくお願いします」。
頭に巻いたタオルがサマになっているこちら女性は、昨年4月から働いている室星澄海(すみか)さん。
ともえ庵では1匹ずつ焼く「一丁焼き」にこだわっている。
これは、いわゆる「天然物」と呼ばれている焼き方。逆に同じ型で10匹などを一度に焼くのは「養殖物」と言われているらしい。
「焼きは温度管理が難しい。あと、厨房はエアコンがないので、夏とかは汗だくになります。でも、サウナに入っているみたいでめっちゃ気持ちいいんです。ガンガン焼いていると瞑想してるみたい」。
「一丁焼き」でじっくりと焼いたたいやきは、皮がパリパリ。甘さも控えめで食べやすいそうだ。
1匹200円なので、子供たちもよく買って行く。
一番人気だという「白玉たいやき」(350円)を焼いてもらった。国産の白玉粉を練るところから始める自信作。
かなり面倒だが、究極の美味しさを求めて。
白玉はたいやきに合わせて玉ではなく、棒状に成形している。
白玉と餡のハーモニー。
澄海さんを推薦してくれたのは、店長の安部 翔さん。看板娘の働きぶりはいかがですか。
「ちっちゃい子ともよく喋るし、お客さんに喜んで帰ってもらおうという気持ちが素晴らしい。あと、極真空手をやっていたせいか、練習のときも『もうちょっと焼かせてください』という感じで根性がありましたね」。
「いるだけで明るくなる存在」だという安部さん。
仕事中は真剣な表情。
そんな澄海さんは東京・福生で生まれ育った。福生といえば米軍横田基地のイメージですが。
「あとはスナック街ですね。小さい頃はオカルト少女でスピリチュアルな妄想世界に住んでいたことを覚えています」。
駅東口にはスナックが密集している一角がある。
自然が多かったので遊び場所は山と川だった。
「虫を捕まえたり、木に登ったり、穴を掘ったり。小学校のときはクラスでいちばん変な女の子と全裸になって多摩川で泳いでいました。河川敷では野良犬によく追いかけられました」。
中学生になると映画『カンフー・パンダ』に影響を受けて、親に「カンフーを習いたい」と懇願する。しかし、カンフーの教室は見つからなかったため、極真空手の道場に通い始めた。
「手足が長いせいか、飛び級ですぐに黒帯になりました。私のかかと落としはマジ強かったです。関東大会では同じ道場の先輩に勝って優勝しちゃって気まずかった」。
授業中にポテトチップスを食べまくる高校時代を経て、大学に進学するも中退。そこからはさまざまなアルバイトを経験した。
「染物職人の友達がいて、そういう伝統的な技を継ぐ仕事はいいなあと思っていたところに、ともえ庵の求人を見つけて応募しました。鯛焼きも日本の伝統食ですよね。ここは水分を含んだまま焼いているので、中身がトロッとしているんです」。
自身でもスイーツや和菓子が好物。お気に入りは錦糸町にある白樺という和菓子店の「たらふくもなか」だ。
「ねっとりとした白餡と繊細なもなかが特徴で、見た目もとってもかわいいのでプレゼントにも喜ばれます」。
招き猫を模した縁起のいいもなか。
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