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2023.03.21

ライフ

「カハラ」デザイナーでハワイアンシャツ完全本の著者デールが語る、アロハシャツの価値


当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら
『THE ALOHA SHIRT―ハワイのスピリット、アロハシャツのすべて』(小林令子訳、デザインエクスチェンジ刊、2003年)の著者デール・ホープさんが、ハワイの島々のプリントに打ち込んでから半世紀近く。その“すべて”のエッセンスを彼に聞いた。
「ここは特別です」。

パロロ渓谷にある自宅のベランダで、デール・ホープさんはそう話す。セコイアの木造住宅は周りを木々に囲まれていて、見た目も住み心地もツリーハウスのようだ。

風にたなびく椰子の木の静かな音を、ときおり鳥の歌声がさえぎる。デールさんが知るのは故郷の文化だけ。その文化と周囲の自然からたえず刺激を受け、人生の大半をハワイ柄の生地に捧げてきた。

デールさんは、1970年代に衣料品製造会社で働き始めた。自分が生まれた1953年に父のハワード・R・ホープさんが興した会社である。はじめのうちは工場で反物の束を引きずっているだけだったが、やがて生涯をかけて身を投じる仕事になっていく。

父はもともと「サンファッション・オブ・ハワイ」という女性服ブランドを持っていた。デールさんはそれに加えて、父とともに男性服のレーベル「HRH」(His Royal Highness〈殿下〉の略語であり、父のイニシャルでもある)を立ち上げた。

HRHのリゾートウェアを永久に残すことも困難ではなかったろうが、若き日のデールさんは自分やサーフィン仲間が着たいと思えるようなシャツを作りたかった。そこで、自己資金で商品のラインナップを増やしていく。

まずTシャツブランド「ハワイアンスタイル」を立ち上げ、その後HRHレーベルでアロハシャツブランド「カハラ」を興した(カハラはハワイでも老舗のアロハシャツブランドだったが、現在は活動休止状態にあり、デールさんは復活に意欲を燃やしている)。

それから数十年間、デールさんは世界的にも指折りの人気と耐久性を誇るアロハシャツを作り続けた。



「ファッションにはそれほど興味がありません」とデールさんは言い切る。

「ただ、アロハシャツについて話したりシャツを作ったりすることは、心底楽しくて胸が躍ります。アロハシャツは世界中にハワイの物語を伝える存在なのです」。

彼が「ハワイの象徴」と呼ぶアロハシャツへの愛情は、著書『THE ALOHA SHIRT―ハワイのスピリット、アロハシャツのすべて』にたっぷりと描かれている。

初版から約16年後の2016年、同書は全面改訂のうえ再発売された。400ページの大書はデールさんの情熱の証しであるとともに、米国本土で言う「ハワイアンシャツ」の生きた歴史でもある。

デールさん自身の豊富な経験と、製造現場で働いていた年配の人の思い出を融合させ、産業の黎明期を芸術の誕生として描き出した本だ。素晴らしい映像と鮮やかな手描き模様のシャツに文章が添えられている。

同書で、デールさんはアロハシャツのアーティストについても熱く語っている。

1936年に義理の兄とともに作品を手掛けたエルシー・ダスさん、ハワイに着想を得た柄を生織物のシャツに復元したG・J・ワタムルさん、色とりどりの鮮やかな島々を描いてハワイの異国情緒を表現したジョン・ケオニ・メイグスさんなどについてだ。

「実は、彼らとは直接話したことがあるんです」と言うデールさんは、ハワイへの訪問者が増えたノスタルジックな時代について、生きた人物から直接学んだことへの畏敬の念を今も忘れていない。

また、デールさんは経営者・歴史家として、20世紀後半の小売業者にも思いを馳せる。業界が出しうる最高のデザインを制作・販売することで、何十年にもわたってアロハシャツの人気を牽引したからだ。

アロハシャツの柄についてたずねると、デールさんはその本質を語った。

「どんな柄なのかにかかわらず、我々の出発点であるハワイの本質に敬意を払わなければなりません。花、魚、カヌー、木。どの柄にも物語があります。シャツを通して、その物語を忠実かつ適切に伝えたいのです」

『THE ALOHA SHIRT』はセレクトショップやオンラインで入手できる。


This article is provided by “FLUX”. Click here for the original article.
※オリジナル記事掲載当時の情報になります。

レベッカ・パイク=文 ジョン・フック=写真
加藤今日子=翻訳

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