OCEANS

SHARE

2023.01.04

ファッション

キーワードは“脱アロハシャツ”。伝統とモダンが融合するハワイアンスタイルの今を知る

ジョセフ・セラオさん●オアフ島で生まれ育った40歳。現在はホノルル・マキキという閑静なエリアに暮らし、起床したら海へ向かうことで一日をスタート。波があればサーフィンし、なければオープンウォータースイムを堪能する。海から上がったあとはカフェに立ち寄りコーヒーをピックしてからオフィスへ。店舗にもよく顔を出し、顧客との談笑を大切にするウェルビーイングな暮らしを送る。

ジョセフ・セラオさん●オアフ島で生まれ育った40歳。現在はホノルル・マキキという閑静なエリアに暮らし、起床したら海へ向かうことで一日をスタート。波があればサーフィンし、なければオープンウォータースイムを堪能する。海から上がったあとはカフェに立ち寄りコーヒーをピックしてからオフィスへ。店舗にもよく顔を出し、顧客との談笑を大切にするウェルビーイングな暮らしを送る。

▶︎すべての写真を見る

そこはファッション不毛地帯なのか? ステレオタイプな「ハワイの服」しかないのか?

注目の現地ファッションブランド、サルベージ パブリック創業者でネオ・オアフローカル、ジョセフ・セラオに話を聞いた。

ハワイの伝統とモダンが融合する「サルベージ パブリック」の世界観

大判のビーチタオルには、ラウアエと呼ばれるハワイのシダ植物をグラフィックに。ちなみにこの図版は1960年代にキルト会社を始めたセラオ家が手掛けたアートワーク。

大判のビーチタオルには、ラウアエと呼ばれるハワイのシダ植物をグラフィックに。ちなみにこの図版は1960年代にキルト会社を始めたセラオ家が手掛けたアートワーク。


「僕はヨーロッパにもルーツがあるのですが」。聞けば三世代前の曾祖母がネイティブのハワイアンでポルトガル人の男性と結婚した。そして、そんな両者のファミリーとしてオアフ島で生まれ育ち、アメリカ本土での就学と就職を経て帰島。

そうした多様なバックボーンを持つ自身のことを「ハワイアン」だと称するのは、日本でのセールスも伸ばしているハワイ発のファッションブランド、サルベージ パブリックの創業者、ジョセフ・セラオだ。

幼少期はネイティブの子供たちへの教育目的で設立された私立学校、カメハメハ・スクールに通った。その頃からハワイ語を操り、自然豊かな土地柄を含めたハワイのなんたるかを十分に理解した。

そして島の先人が伝統航海カヌーを駆使して海を渡ったという歴史は、フロンティア精神とオープンマインドを無意識に育ませた。

Tシャツに短パン、ビーチサンダルという格好で快適に暮らせるゆえのファッション不毛の地で、現代的解釈を加えた新しいハワイアンスタイルのブランドを誕生させた理由を探る。

唯一のオンリーショップには古代の波乗りボードであるアライアがディスプレイ。

唯一のオンリーショップには古代の波乗りボードであるアライアがディスプレイ。


「ブランドは2013年にカメハメハ・スクール時代の同級生、ナパリ・スーザと立ち上げました。それまで僕はユタ州ソルトレイクの大学で環境科学を学んだのちにロサンゼルスで就職。数年後にハワイへ戻り、そのときに弁護士として働いていたナパリに再会したのです。

そしてクリエイティブな仕事がしたいねと意気投合し、その数カ月後にはコンセプトをまとめ、ブランドをスタートさせました」。

軽量のナイロンブルゾンには「日の出から日没まで」という意味を持つハワイ語と英語をデザイン要素として刺繍を施した。

軽量のナイロンブルゾンには「日の出から日没まで」という意味を持つハワイ語と英語をデザイン要素として刺繍を施した。


創業時からハワイの文化をコンセプトに世界へ広めたいと考えた。

「自然環境は現代社会における大切なキーワード。そうした財産を誇るハワイからの発信は共感を得られると期待しました。

ただそのためには、ハワイの風土を表現しながらハワイ以外の都市に対応できるものが必要だと思ったのです。だからステレオタイプなアロハシャツではなく、ハワイアンが東京やパリを訪れるときに着られるアイテムを作りたかった。

また越境ECも視野に入れているので、ハワイのアイデンティティを大切にしながら、ファッションカルチャーが根付く都市で生まれたブランドと肩を並べられるように成長させたいとも考えました」。

パーカやロングスリーブTシャツなど、ラウアエをあしらったアイテムは日本でも購入可能だ。パーカ1万9800円/サルベージ パブリック(デルタ 03-6453-4030)

パーカやロングスリーブTシャツなど、ラウアエをあしらったアイテムは日本でも購入可能だ。パーカ1万9800円/サルベージ パブリック(デルタ 03-6453-4030)


その欲求は、まさに島に暮らす古代の人たちが異国とのつながりを求め大海原を渡った心象に似ている。

「グラフィックには古来の哲学、多様な種類の波、シダ植物やきれいな花々などハワイらしいモチーフを表現。

色もアースカラーや土壌を思わせる茶色、シルバーソードというハワイ原産植物を連想させるセージ色など、我々の土地に馴染むものを採用しています」。

カットソー7920円/サルベージ パブリック(デルタ 03-6453-4030)

カットソー7920円/サルベージ パブリック(デルタ 03-6453-4030)


作られるワードローブはどれもグローバル感が溢れモダンでありながら随所にハワイのエッセンスが盛り込まれる。新しいジェネレーションが作る、いわばハワイアンスタイル2.0。

世界の都市へ拡張する旅はまだ序章にすぎない。



サルベージ パブリック サウスショアマーケット
ワイキキの中心から車で約10分。サルベージ パブリックの唯一のブティックは、カカアコエリアの大規模ショッピングセンター、ワードビレッジ内で2016年にオープンしたサウスショアマーケットにある。小体な店舗ながら、ラインナップされる服に加え、ウォールアートやグラフィックも秀逸だ。

住所:1170 Auahi St. Honolulu HI 96814 
電話番号:+1-808-591-8411
営業:10:00〜21:00(日曜は18:00まで) 不定休


HISASHI UCHIDA=写真 小山内 隆=取材・文 伊澤慶一=文

SHARE

次の記事を読み込んでいます。