「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:製薬系営業職・45歳「部下とのコミュニケーションをできるだけ多くとろうと、1on1ツールを活用して頑張ってきました。部下と距離が縮まってきたのは感じているのですが、会社への不平不満を聞くのが正直しんどいです。
傾聴が重要と言われているので反論はしませんが、会社のせいにして無責任な部下には正直腹がたってなりません。このままでは感情が爆発してしまいそうです」。
アドバイスしてくれるのは…… そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
私も「傾聴」できませんでした
私は学生の頃、セラピスト(心理療法家)になりたかったので、その必須スキルとされていた「傾聴」と聞くと懐かしい思いすらあります。
ただ、私はその「傾聴」が全然できなかったので(自分が話しすぎる)、「こりゃだめだ」と思って別の道に進みました。ところが、人事になって、セラピストとは別の形ですが、採用面接や人事面談で、人の話を大量に聴き続けることになりました。
「結局、人の話を聴くことから逃れられないのだ」と覚悟し、なんとかそれっぽいことをしながら、今に至ります。そんな私なので、今回のお悩みはとても共感できますので、一緒に考えていきたいと思います。
話を聞かずに、勝手に自分の考えを進めていた
まず、私ができなかったのは、人の話に集中的に聴き入るということでした。相手の話すことからいろいろと拡散的に想像が膨らんで、目の前の人の話を聞き流している自分がいました。
例えば、「昨日のドラマ面白かったね」と言われると、ちゃんと相手の話を聴くのであれば、「ほんとだね。僕もそう思った」と共感や肯定をしたり、「何が面白かった?」と相手の考えを聞いたりするのが普通でしょう。
しかし、私はややもすると、「最近は本当にそういうドラマが増えているなあ」「なぜ人はああいうドラマを面白がるのだろう」などと、目の前の相手を置き去りにして、勝手に考えを進めたり、連想したりしました。
相手を自分が何かを考える上での、ただの話題提供者のようにしてしまっていたわけです。最悪でした。
人事になっても話が聴けずに叱られていた
人事になって採用面接をする際にも最初のうちは同じような感じで、候補者が「私はラクロス部なのですが……」と話し始めると、私は「へー、ラクロス部ってこれこれこういう部なんですよね?とても大変じゃなかったですか?」などと、候補者が言ってもいないことを勝手に話し始めてしまいました。
そして、候補者が、「そうなんです」と私の話を肯定してくれただけで「いい人だ」などと評価してしまい、私の採用面接に同席していた先輩に「曽和、候補者は『そうなんです』しか言ってないやないか!ちゃんと相手の話を聴け!」と叱られたものです。
考えてはいけない。解釈してはいけない
しかし、何度もそういう指摘を受けて、会話の内容を事細かに振り返ったことで、そこから私は気づかされました。候補者は何にも言っていないのに、勝手に想像し、考えて、解釈してはいけないのだ、と。
話を聴く際には、まず自分の思考を一旦停止させて、相手が話す言葉に対して受け身にならなくてはならない。そして、一言一句をそのままに受け取って理解をすることだけに努める。これが大事なのではないかと思ったのです。
ある意味「何も考えずに聴こう」ということです。そう言えば、昔、国語が苦手で、先生に「自分の勝手な意見を述べるな」と言われていたのを思い出しました。
あれも、今考えると、問題文の作者が言ってもいないことを勝手に考えていたのでしょう。
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