左側の部屋には11月現在、ウィメンズの服もツーラック並ぶ(写真左手)。
「撮影時に、フォトグラファーから『小沢さんのその服ってどこのブランドですか』と聞かれたので、昨日高円寺で買った古着、と答えたんです。そうしたら、『小沢さんはハイブランドしか着ないのかと思ってました!』とすごく驚かれた。そのとき、パッとアイデアが浮かびました。
僕はモードな服だけではなく古着も買うし、ユニクロやギャップだって着る。そのミックス感こそが自分らしいのかもしれない。
であれば、高い安い、古い新しいというステレオタイプな基準を凌駕した、スタイリスト・小沢宏の視点でしかできない表現があるのではないか。自分のキャリアをどう着地させるか、思い悩んでいた矢先に掴んだひと筋の光だったのです。
そこに在庫問題への個人的な想いが乗った形。サステナブルは後付けで、基本的にはスタイリストとしての表現が軸にあります」。
かつて使われていた荷物専用エレベーターも店の歴史として残している。
それから1年半かけて準備を進め、過去に付き合いのある企業やブランドと厳しい交渉を重ねた。
前例のないプロジェクトだったため、「在庫品を堂々と二次流通させるなど不可能」と否定的な意見もあった。また「売れ残りの在庫に小沢さんがいいと思えるアイテムなどあるはずがない」との声も。
しかし現実は小沢さんの予想どおり。想像をはるかに超える余剰在庫は宝の山だった。この構想は紆余曲折を経て実を結ぶ。
1階のラッピング&ギフト雑貨店「ボン カドゥ」。
「例えば競合するセレクトショップAとBの商品が同じラックに並ぶ。しかも元値の半額に近い値段で。これが東京なら協力は難しいという話になりますが、ここは長野県上田市。偶然ながら絶妙な距離感でした」。
商品が揃えば、あとはそれをどう見せるか。ここでは迷いはなかった。冒頭で述べた“雑誌の3D化”である。
11月5日から展開する特集は「NOT FOR SALE」。
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