ファサードにある「KUDOU WALNUT」のサインに当時の面影が残る。「サインを無理やり撤去して跡が残るくらいなら、そのまま活かせばいい」という小沢さんらしい柔軟な発想。時計を設置してランドマーク的機能を持たせた。
▶︎すべての画像を見る 経年在庫の循環、サステナブル、地方創生、2拠点生活などなど。「エディストリアル ストア」は昨今話題のキーワードの数々と面白いほどにリンクする。
だが、今回の取材でこれらは店のコンセプトのいち要素にすぎないことがわかった。
| スタイリスト/エディストリアル ストア店主 小沢 宏さん 1964年、長野県上田市生まれ。大学在学中にスタイリスト、御供秀彦さんのアシスタントとして働き始める。独立後は男性誌のスタイリングを軸に、セレクトショップのプロデュースも手掛け、自身のブランドをローンチしたことも。 |
キャッチーな言葉の響きに踊らされると本質を見失ってしまう。結論からいえば、この店は小沢宏さんのスタイリスト人生の着地点であり、“雑誌の3D化”という言葉に収斂されていくと思う。
店を訪れた服好きが幸せになり、社会もまた幸せになる。そんな店がどのようにして生まれたのか、順を追って見ていこう。
3階右手は、普段はクローズしているプライベートルーム。特集イベントを組む際、サロン的に使う。
店で販売される商品は、ブランドが抱えるデッドストックやB品、サンプルなどのいわゆる“在庫”。アパレル産業の構造的な問題に対し、大胆にメスを入れている。
「2017年に自分のブランドをクローズしたとき、事務所から大量のB品やサンプルが見つかり、ショックを受けました。ファッションを愛する人間として、作った洋服が捨てられるのは何より心が痛む。
自分の場合は親戚や友人に配り、廃棄処分せずに済みましたが、大きな企業やブランドなら抱えている在庫は尋常な量ではないだろうなと」。
その膨大な在庫のなかから小沢宏というフィルターを通して再編集し、デッドならぬ“ライブストック”と名づけ、再び世に送り出す。この斬新な発想はふとした瞬間に訪れた。
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