▶︎すべての画像を見る 横浜・反町のシャッター街にぽつんと存在する靴リペアの専門店「ハドソン靴店」。2代目店主の村上 塁さんは40歳ながら、確かな知識と経験に裏付けされた技術で厚い信頼を獲得している。
ハドソン靴店には家族の大切な形見や、他店で断られた修復難易度の高い靴が全国から集まる。その数、なんと年間で︎約1200足にのぼる。
ハドソン靴店の2代目店主、村上 塁さん。
所狭しと工具や資材が並んだ店内。これらはいずれも特注品で、既製品はひとつもない。大型の機械は業者にカスタムしてもらい、インクに至ってはオリジナルを製品化した。インクは家具メーカーが購入を求めるほどのクオリティである。
そしてもうひとつ、村上さんが工具や資材と同じようにこだわるのが“作業着”だ。仕事中に何を着るかによって快適さは変わり、作業スピードにも大きく影響するのだという。
「これまでいろいろな服を作業着にしてきましたが、今はもうパタゴニアしか着ません。全身パタゴニアしか着ない“パタゴニアン”ですよ(笑)」。
店の公式ユニフォームにもパタゴニアを採用しているというハドソン靴店。なぜ彼は、そこまでパタゴニアにこだわるのか。
カバーオール < パタゴニアのシャツ。その理由は……
この日、村上さんが着ていたのはパタゴニアの「メンズ・ファリアーズ・シャツ」。ご覧のとおり、胸ポケットのサイドに定規やペンがぴたっと収まる幅のプリーツが入っている。
「ペンや定規はお客さんの靴を測るのに必要な道具ですが、革を傷つけてしまうものでもあります。だから扱いには気をつけなければなりませんが、胸ポケットに入れると中で泳いじゃうし、かがんだら床に落ちてしまう。
でも、このプリーツならすっぽり収納できて安定するので、かなり便利なんですよ。ほかでは見たことがない、非常に珍しく実用的なデザインだと思います。
また、靴職人は当たり前のようにカバーオールを着てますけど、狙ったかのようにお揃いになってしまうから僕は嫌いなんです(笑)。パタゴニアのワークウェアは、作業着に見えないカッコよさがあるのもいいですね」。
今のバチッとキマったツーブロックからは想像しがたいが、村上さんが「ハドソン靴店」を引き継いだばかりの頃は髪もボサボサで、見た目にも無頓着だったという。
修理した靴も、コンビニのビニール袋に入れて返すほどだったとか。
「靴職人は見てくれを気にしない人が昔から多かったんです。歴史を振り返ると、日本の靴職人のルーツは賎民と呼ばれて虐げられた人たちですし、仕事はいわゆる“3K”の部類。その風習が今も残っちゃってるんですね。
でも、うちに来るお客さんの中には経営者も多くて、彼らから『コンビニの袋に仕上がった靴を入れるのはさすがにダメだよ』『ボロボロの服で作業している靴職人を小さい子が見て憧れると思うか?』とアドバイスをもらったんです」。
考えてみれば、消防士や警察官など、子供が憧れる職業は制服がカッコいいケースが多い。そう気づいた村上さんは自身のブランディングを意識するようになり、服装や髪型を変え、店の内装も見直した。
「作業のしやすさは重要ですが、それと同じくらい、店頭でも“ちゃんと見える服”であることにこだわりたいなと。その両方の条件を満たしたのが、パタゴニアのワークウェアだったんです」。
タフな生地は2年着続けても破れない!
“パタゴニアン”として語りたいパタゴニアの魅力はまだまだある。
「とにかくパタゴニアは丈夫です。このシャツも2年くらい着てますが、いまだに破れたことがありません。持っているパタゴニアはまだ1枚も捨てたことがないですね。
シャツの色も最初からちょっとくすんでいるので、インクが付いても目立ちません。普段から靴を削ったり、接着剤を使ったり、塗料を使ったりしていますが、2年経ってもまだ清潔感があります。こんな頑丈なシャツはほかにないですよ」。
ボタンが金属製なのも高ポイントだという。
「何度も洗濯をするので、プラスチック製のボタンだとすぐに割れてしまうんです。でも、パタゴニアのワークウェアはどれもボタンが金属製なので、割れることがありません。繰り返し洗濯をしてもまったく問題ないですね」。
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