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高校ではハンドボール部のマネージャーになる。運動が苦手なのに中学で軟式テニス部に入り、撃沈したという経緯もあった。

「ハンドボールはあまりメジャーじゃないので、マネージャーもお飾りではなく伸び代があるかな、私が開拓できる余地があるかなと思ったんです。入部後は自分から手を挙げて、ボール拾いや体幹トレーニングのお手伝いとかに積極的に関わっていました」。

最後の四国総体で身を乗り出して応援する礼奈さん。

最後の四国総体で身を乗り出して応援する礼奈さん。


このマネージャーの経験が「本当の心地よい接客」、つまり「押し付けではない、相手のニーズを汲み取った接客」を学ぶきっかけになったという。

こちらは高校最後の体育祭の写真。

こちらは高校最後の体育祭の写真。


「写真は9人ですが、仲よしの10人グループがあって、いつも背の順に並んで写真を撮るのが定番でした。今でも徳島に帰ったらよく会うメンバーです」。

高校卒業後は姉と同じ、兵庫県内の大学に進学。割烹料理店でアルバイトをして接客マナーなどを学んだ。就職先は外国文化に触れたいという思いから、ANA(全日空)のグランドスタッフを選ぶ。姉は羽田空港、礼奈さんは成田空港の勤務だった。

「いちばん記憶に残っているのは、あまり飛行機に乗り慣れていない日本人のご夫婦のこと。国際線は通常2時間前のチェックインなんですが、1時間を切ったぐらいでいらっしゃったんです。ハネムーンだというので、フライトコントロールをしている先輩の許可をもらって、一緒にゲートまで走りました」。

結果的に搭乗に間に合い、帰国した夫妻からスタッフづてにお礼のメッセージを受け取る。「ショートカット」「ブルーのスカーフ」といった風貌の特徴や似顔絵、自身の名前、搭乗便名が添えられていたため、無事、礼奈さんの手元に届いたとのこと。

そこには、「阿部さんのおかげで充実したハネムーンを過ごすことができました。終始やさしい対応を本当にありがとうございました!」と書かれていた。

自宅の枕元に飾っているメッセージ。

自宅の枕元に飾っているメッセージ。


ANAで勤務した3年間では、同期や先輩との絆も深まった。いまでも定期的にキャンプをする仲だという。

「お気に入りは軽井沢のキャンプ場。コーヒー好きのメンバーが豆やミルを持ってきてくれたりします。夜になったら地面に寝転がってみんなで星空を見る時間が至福なんです」。

いまはそれぞれの場所で違う仕事をしているが、一緒に厳しい研修を耐え抜いたり、空港を走り回っていた思い出は消えない。

渓流釣りやスラックラインも楽しめる「KARUIZAWA CAMP GOLD」。

渓流釣りやスラックラインも楽しめる「KARUIZAWA CAMP GOLD」。


さて、そんなこんなで礼奈さんは1年ほど前に、ここ日本M&Aセンターに転職した。推薦してくれたのは、同じ大阪支社で「セレモニスト」として勤務する先輩、眞辺翔子さん。

御社の看板娘、いかがですか。

御社の看板娘、いかがですか。


「セレモニストは現在8人いるんですが、客室乗務員、結婚式場などで勤務経験があるサービスのプロ。阿部もそのひとりで、リハーサルもない成約式の現場に入ると瞬時にやるべきことを実行に移します。

さらに、接客スキルに加えてズルいぐらいに人を魅了するキャラクターなんです。先日は『眞辺さーん、地下鉄の階段で転んじゃったんですよー』と言いながら、膝の傷を見せに来ました」。

お茶目な礼奈さんにある成約式の一部始終について教えてもらった。

東京会場はこの会議室が使用。

東京会場はこの成約式専用ルームを使用。


24階からの眺望が特別な日を盛り立てる。

花を飾って署名用の用具一式を配置。

花を飾って署名用の道具一式を配置。


M&A当事者である企業の事業内容やM&Aセレモニストの個性によって成約式にも個々の色は出るが、共通した思いは「参加者全員の記憶に残るように」というもの。

わが子のように育ててきた企業の新しい門出が普通の1日で終わらないように、記念品や提供するものも考え抜いて式をプロデュースをしているという。従って、ひとつとして同じ式はない。

譲渡企業はケーキ店、譲り受け企業は焼き菓子などを製造して卸す企業。

譲渡企業はケーキ店、譲り受ける企業は焼き菓子などを製造して卸す企業。


「これは私が入社後初めて、事前準備から当日運営まで主担当を務めた思い出深い成約式です。両社とも多くの人に愛されるお菓子を作っている企業様という共通点がありました」。

考え抜いた末、会場に両社のお菓子を飾るディスプレイを実施。さらに、サプライズも仕込む。

譲渡企業の社長に「当日は仕事で参加できない」と伝えていた息子が突然登場したのだ。

両親の姿を見てきた息子、娘からの手紙を読んで感極まる社長。

両親の姿を見てきた息子、娘からの手紙を読んで感極まる社長。


人の役に立ちたいという思いを持ち続けてきた礼奈さんにとって、「M&Aセレモニスト」は天職かもしれない。

一方で食に対する好奇心も旺盛。先月、京都で食べたという「アナグマ料理」の写真もあった。

「京都の先斗町にあるお店なのですが、歩いている途中に見つけて入ったので店名は覚えていません。アジアでカエルやコオロギも食べてきましたが、アナグマは出会ったことがなかったので、すぐに注文ました」。

「ケモノ感満載」だったとのこと。

「ケモノ感満載」だったとのこと。


では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

なりたい職業「セレモニスト」に向かって。

なりたい職業「M&Aセレモニスト」に向かって。



[取材協力]
日本M&Aセンター
www.nihon-ma.co.jp

石原たきび=取材・文

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