「弊社の看板娘」とは…… コロナ禍が少し落ち着いたせいで、観光地にも賑やかさが戻ってきた。
東京の名所、浅草もそのひとつ。
今回、訪れたのは雷門にほど近いオフィス。中を覗くとーー。
▶︎この記事の画像ギャラリーを見る 看板娘、発見。
ここは、浅草で人力車による観光業を営む「東京力車(りくしゃ)」。約70人の俥夫を抱えている。
外に繰り出してさっそく登場していただきましょう。
「よろしくお願いします」。
こちらは、都内の女子大に通う浅野里英さん。俥夫のアルバイト歴は約2年半だ。ご出身はどちらですか?
「生まれたのは東京ですが、父が転勤族だったので、生後すぐにミラノへ。その後、フランクフルトと上海にも住みました」。
フランクフルト時代によく遊んだ公園(左が妹、右が弟)。
お母さんがよくスーパーマーケットに連れて行ってくれていた。
妹や弟とソーセージ店の店頭に張り付いてニコニコしていると、タダでソーセージを分けてもらえたという。
中学以降は東京暮らし、高校ではチアリーディング部に入部した。
「私はトップで持ち上げられる役でした。下の子たちが持ち上げやすいように、自分が体重をかけるところをはっきり伝えます。さらに、脚を含めて体の全部を固めると持ち上げやすいでんです」。
高3の夏、最後の引退演技(里英さんは上段中央)。
「ダンス経験もないので、最初はついて行くのに必死でした。でも、昔からの友人に『笑顔が増えたね』と言われました。チア部でがんばらなかったら、俥夫のアルバイトもやっていなかったと思います」。
子供の頃に暮らしたヨーロッパへの思いも強い。
聞けば、つい先日も友人とパリ、ウィーン、フランクフルト、ハイデルベルク、マドリードなどを旅行してきたばかりだという。
スペインのセゴビアでは世界遺産に登録されている「ローマ水道橋」も訪問。
「私、パンが大好きなんですがパリの『BO&MIE』というお店で買ったクロワッサンがめちゃめちゃ美味しかった思い出があります。外側がパリパリで、バターがやさしく香るんです」。
地元のファンが多いクロワッサン。
パン好きとあって、里英さんは自分でパンを作ってしまう。しかも、すべて手捏ねなのだ。
「まず、強力粉と水、塩、砂糖、イーストパウダーをひたすら混ぜながら捏ねます。次に一次発酵させて、また捏ねた後で生地を休ませて、成型、二次発酵を経て、ようやく焼くという手順です」。
ひたすら捏ねるのも大変そうだが、単純作業はストレス発散になるという。
完全手作りのねじりリンゴジャムパン。
ヨーロッパ旅行に話を戻すと、最終日に大事件が起きる。
「マドリードでパスポートを失くしたんです。どこを探してもないし、友人は先に帰国しているし、スペイン語は喋れないという大ピンチ。
空港で呆然としていたら、隣にいた日本人男性に声を掛けられて、事情を説明したらマドリード在住の日本人女性を紹介してくれました」。
その日は女性の家に泊まりつつ、翌日に警察などでの再発行手続きを手伝ってもらった。
別れ際に「お礼の品を何も持ってないんです」と言ったところ、女性の返事は「私も旅先でいろんな人に助けられたの。そういう出会いは巡ってくるものだから、あなたも困っている人を見かけたら助けてあげてね」という泣けるものだった。
無事、帰国できました。
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