OCEANS

SHARE

消費者を巻き込んでいく草の根的なアウトドアイベント

去る10月、グランフロント大阪にオープンした「マムート 大阪」にはプロダクトケア・スペシャリストが常駐。ウェアからシューズまで、長く着るためのコツを丁寧に教えてくれる。

去る10月、グランフロント大阪にオープンした「マムート 大阪」にはプロダクトケア・スペシャリストが常駐。ウェアからシューズまで、長く着るためのコツを丁寧に教えてくれる。


そして日本独自の取り組みにもいくつか言及しておこう。カスタマーの「できるだけ長く着たい」という要望に的確なアドバイスを送るため、主要店舗に「プロダクトケア・スペシャリスト」を配員。

洗濯や手入れなど製品ケアの側面から、「長く着る」ことへのサポートを行う。

継続して取り組んでいるのは八ヶ岳の登山道整備だ。アスファルトで舗装されている道路とは違い、登山道は大雨や土砂崩れにより容易に荒れてしまうもの。登りやすいようキープされているのは誰かが補修してくれているからだ。

マムートでは登山道に敷く枕木を提供し、山小屋のスタッフや山岳ガイドとともに随時保全に取り組んでいる。

八ヶ岳の登山道整備に使用される枕木がこちら。オーシャンズも2022年6月、実際に八ヶ岳を訪れて確認した。赤岳鉱泉から主峰・赤岳に向かう途中の中山乗越に敷設されている。

八ヶ岳の登山道整備に使用される枕木がこちら。オーシャンズも2022年6月、実際に八ヶ岳を訪れて確認した。赤岳鉱泉から主峰・赤岳に向かう途中の中山乗越に敷設されている。


またアニバーサリーイヤーの今年’22年は、山の魅力を伝える多くのイベントを精力的に実施。3月には東京・渋谷のギャラリーで「マムート160年にわたるイノベーション展」を開き、ブランドの原点であるクライミングロープの初期モデルや歴代の製品、「日本の守るべき美しい山景色」をテーマにした多くの写真を展示した。

7月にはカスタマーを招待し、宮城県・蔵王と北海道・旭岳で登山ツアーを敢行。8月11日の山の日には東京・神田で「山の日特別授業」を開催した。ボーイスカウトの小学生たち25名を招き、山の楽しさと環境保護の大切さを次世代に伝えた。

8月11日に開催された「山の日特別授業」でのひとコマ。ボーイスカウトの小学生たちは氷河に関するクイズや、富山から運ばれた本物の氷河の氷の観察を楽しんだ。

8月11日に開催された「山の日特別授業」でのひとコマ。ボーイスカウトの小学生たちは氷河に関するクイズや、富山から運ばれた本物の氷河の氷の観察を楽しんだ。


さて、冒頭でアルプスの氷河について言及したが、実は日本にも氷河があることをご存じだろうか。そのひとつが富山・立山連峰の北部、真砂岳東面のカール(※)にある氷河だ。

全長約350m、厚さ最大30m。スイスのそれと比べ明らかに規模は小さいが、年に数cmのスピードで動くれっきとした氷河である。

内蔵助氷河の上を歩く。日本に現存する7つの氷河のうち、内蔵助氷河を含め5つが富山の立山連峰にある。

内蔵助氷河の上を歩く。日本に現存する7つの氷河のうち、内蔵助氷河を含め5つが富山の立山連峰にある。


9月、オーシャンズはこの内蔵助氷河を巡る登山ツアーに同行した。そして氷の上に立ち、その氷を手に取って観察した。

正直に言えば、雪渓のような規模感だ。言われなければ氷河とわからないかもしれない。だが最深部の氷は実に約1700年前のものであり、そうと聞けば、それだけの時間を重ねてきた氷河に対して畏敬の念を抱かざるを得なかった。

これが“消費者を巻き込む”ための、草の根レベルの活動の要諦なのだ。地道だが、心に確実にくさびを打ち込む。それがマムートの意図するところであり、圧倒的な自然に相対した人間の、率直な反応でもあるのだと思う。

最後にフーバーさんは力強く、こんなふうに語ってくれた。「山は、地球上のどの場所よりも人の心を動かします。だからこそ私たちは山の美しさを守りたい。そして山で感動するための製品、体験、物語を創造していきたいんです」。

MAMMUT マムート
創業年:1862年
本社所在地:スイス・セオン
従業員数:約800名
事業展開:世界約40カ国
国内直営店:11店舗

Sustainable Keywords
・2050年までに温室効果ガスをネットゼロに
・独自のフレームワーク「WE CARE」を作成
・製品ケアと修理により「長く着る」をサポート

(※)カール
氷河の浸食作用によって形成される代表的な地形のひとつ。斜面をスプーンでえぐり取ったような窪んだ地形で、上から見ると半円状もしくは馬蹄形状の谷となる。圏谷ともいう。

鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文

SHARE

次の記事を読み込んでいます。