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「乾燥機で生地が溶ける」は大ウソ!

シェルは、通常の洗濯物と同様に乾燥機(低温)を使用して乾かすか、自然乾燥するのがおすすめだ。

「シェルは、乾いた状態から熱を与えることで撥水性が蘇るんです」と内野さん。乾燥機にかけても水分を飛ばして乾かすだけでは、撥水性を蘇らせるメンテナンスにはならないと覚えておこう。

濡れた状態で乾燥機に入れる場合は、通常の乾燥よりも時間を追加したほうがいい。


 
「乾燥機で熱を加えることで、生地表面の撥水機能を起こしてあげる必要があります。もし乾燥機にかけられない場合は、当て布をして低温でアイロンをかける。もしくはドライヤーで熱風を当ててもいいでしょう」。
 
「乾燥機にかけたらシェルが溶けるのでは?」と思うかもしれないが、それはよくある勘違い。家庭用、もしくはコインランドリーにある乾燥機ならまったく問題ないそうだ。

この方法で洗濯しておけば、撥水性を何年もキープできる! と思いきや、さすがにそうもいかないようで……。



「使用頻度にもよるので明確には言えませんが、何十年も撥水効果を持続させるのは難しいでしょう。生地に施した耐久性撥水加工は、いずれ落ち切ってしまいます」。

そこで内野さんがおすすめするのが、撥水剤によるコーティングだ。洗剤タイプの撥水剤を使用すれば、洗濯の際に洗剤とともに入れるだけで、簡単に撥水加工を施せる。定期的にコーティングを行うことでシェルの寿命は劇的に長くなるという。

「正しい方法で、シェルをメンテナンスして長く使い続けてほしい」と、内野さんがいうには理由がある。
 
パタゴニアでは現在、2024年を目処に残留性のあるフッ素化合物(PFC)を、製品の撥水加工に使用しないことを目指す取り組みを行っている。こういったPFCフリーの製品は、環境に悪影響を及ぼさずに撥水性を発揮できる一方で、従来に比べて撥油性が劣る側面があるのだとか。
 
「僕らが定義する最高の製品とは“環境へのインパクトを最小限に抑えつつ、最大限のパフォーマンスを発揮するもの”です。常日頃遊ばせてもらっているフィールドを未来に残すためにも、ひとつの製品と一層長く付き合っていくことが重要。そのためには、シェルの正しいケア方法を発信していきたいと考えています」。


シェルさえ着ていれば「とりあえず大丈夫」と思うなかれ。機能性ウェアもほかのギアと同様、しっかり手入れをし、長く育てていくことが重要だ。

Saki Aoyama=写真 外山壮一=文

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