「僕たちの強みは、ハウスの横で開発して、実際の農場での実験を繰り返していること。世界でいちばん農業の現場から近いロボット会社だと自負しています。目の前で困っている生産者を助けたいという気持ちと現場からの声の届きやすさが製品力につながっています」。
地域の人々と二人三脚で事業に取り組む齋藤さん。実は、シリコンバレーで働いていた過去を持つ。転機は2011年の東日本大震災だった。
「それまで自分のスキルはお金を稼ぐ手段だと認識していました。しかし、震災直後に福島を訪れてその惨状を目にしてから、『スキルを地域や人のために活かせるのではないか』と思うようになりました」。
そうして始まったのが、同じく齋藤さんが代表を務める、持続可能な地域社会を目指す財団、こゆ地域づくり推進機構。その中で行われていた生産者との研究会から始まったのが、アグリストだ。
このふたつの組織を育て、描く未来がある。
「会社のIPOをひとつの通過すべき点だと考えています。人口1万6000人の町から上場企業が生まれれば、僕たちをロールモデルとして、全国各地の自治体でスタートアップへの投資が始まるはずです。
そんな事例が増えることで、おのずと地方が元気になっていくと思うんです」。
齋藤さんは、その試みを「風景を変える」ことと表現する。
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