「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……▶︎すべての画像を見る マルニ木工は90年以上も工芸的な美しい家具を作り続けてきたメーカー。
最近ではプロダクト デザイナーの深澤直人、ジャスパー・モリソンとコラボした「マルニコレクション」で知られていますが、1950〜’70年代の、いわゆる“オールド マルニ”と呼ばれるアーカイブも、ヴィンテージ家具マニアたちに人気のプロダクト。
僕もその時代のマガジンラックを持っていますが、ヨーロッパのミッドセンチュリーの影響を受けたモダンなフォルムと、竹を使った和のテイストが巧みにミックスされていて、当時の空気を感じさせます。’52年にデザインされた、ノスタルジックな孔雀のロゴのシールも付いていて、さらにヴィンテージ感たっぷり。
マルニ木工では、こうした’50〜’70年代のアーカイブを、その時代のレトロで重厚なテイストはそのままに、生地や塗装などでモダンにアップデートするという“リノベーション家具”を展開しています。
デルタチェアは1960年代にダイニングチェアとして誕生。左は当時の商品を手直しし座面をミナ ペルホネンの生地に張り替えたリノベーション家具、右は現行モデルでファブリックを選べる。[左]H710×W375×D450×SH440mm 8万6900円/マルニファニシング 03-3662-0572 [右]H745×W378×D468×SH435mm 5万6100円/マルニ木工 03-5614-6598
写真のデルタチェアもそのひとつ。最近の家具では見かけないはさみのような脚のフォルムが美しく、ジャン・プルーヴェの椅子がそうであるようにバックスタイルもとてもスタイリッシュ。海外では生まれえないこのコンパクトなサイズ感、でもミッドセンチュリーの家具に影響を受けた洗練されたデザインは、まさに現代に蘇った名作です。
実は最近、このリノベーション家具のプロジェクトでスペシャルエディションを作らせていただく機会に恵まれました。マルニ木工のリノベーションを手掛ける工場に伺って、職人さんたちと一緒に、アーカイブの家具を見ながら仕様を決めていくプロセスはとても楽しかった。
座面をペーパーコード仕様にしたデルタチェアのほか、アームチェア、マガジンラックなど、生地の張り替えだけでなく、クッションの形状を工夫したり、真鍮のリングを加えたりして、全6モデル10アイテムを提案させていただきました。
アーカイブにリスペクトを払い丁寧にリノベートしつつ、そこに現代の空気をミックスしアップデートしていく。家具だけでなく、優れたデザインが上手に再生されながら長く愛されていったらいいですね。
[藤井隆行 プロフィール]東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「いよいよ寒くなってきましたね。ノンネイティブではグレーをキーカラーにした冬春ものがスタートしました。ぜひ店頭で見てほしいです」。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは…… 世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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