言葉②テープを切ったことの意味を噛み締められる人は、次の目標も勝手に出てくるはず
Q:「ダブルギアリング」に続き、04年に発表したデビュー作「ハゲタカ」でも不得手な経済小説に挑みました。ビジネスの世界でも、目標を達成するために、こだわりを捨てなければならないケースは少なくありませんが、理想と現実の間でどのように考えを変えていったのですか?
デビューすること自体は割と簡単なんです。その後続けることの方が大変で、最初はこちらの自由はないです。
条件がいっぱいあって、その条件を飲むならもう1本どうぞって言ってくる。その際、できるだけ短期間で仕上げて発表できるかがとても大事なので、スタートラインは、ある意味地獄の始まりと言ってもいいぐらいです。私も、国際政治の小説を書きたかったんですが、「(ダブルギアリングで)結果が出た以上、経済(小説)からいっていただかないと」と。
ただ、クリエイティブの仕事では、別の看板を掲げても自分が好きで触れてきた物がどこか必ず影響します。私も、「枠は経済小説でも、自分の中では陰謀小説を書くつもりでいよう」と。そうして、結果的に「ハゲタカ」が生まれたんです。
Q:ビジネスマンでもスポーツ選手でも、夢が叶った後や満足感を得た後に悩みを感じる人は少なくありません。次のアクションを起こすためのアドバイスはありますか? 自分の目標を達成したら、必ず次の目標を見つけられる人がいます。つまり、これができたら今度はここが足りないと分かる人もいるんです。その場合はただひたすら自分の目標を追いかけ続ければいいんですけど、なかなか難しい。
なぜかというと、目標がトロフィーだからです。つまり、ホームラン王とか、ベストセラーとか、なんとか賞とか。残念ながらそれだと続かない。これを取るとトロフィーをもらえるんで、ホッとしますよね。
けど、ずっと続けられる理由って、単純に好きだからとか、面白く感じて飽きないとか、好きだっていうことを前提としたこだわりがあるんですよ。だから、そこを探すことだと思います。
Q:自分が歩んできた足跡に大切なヒントがあるということですね。 そう思います。その職業や形やトロフィーにこだわってる人にとっては、ずっとテープを切ることしか頭にないんですね。でも、このテープを切ったことの意味をちゃんと噛み締められる人にとっては、勝手に出てくるはずです。
だから、自問自答ってすごい大切で、自分は今現役として絶頂期にいるけど、「これ何年続くんだろう」って思うはずなんですよ。
もし、それも思わないんだったら、その人やっぱりもっと短いキャリアで終わるはずなんですよね。最後は自分と付き合っていくしかない人生なので、そういう自問自答のコミュニケーションをやっていけば、次何をしたいかが見えないというのは多分ないんです。
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