当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら。 星野リゾート代表・星野佳路がゲストを招いて話を聞く対談シリーズ。今回は『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』の著者としても知られる情報学者、脳科学者の安宅和人さんとAIをめぐる対談の最終回。前回までのはこちらから
1回目、
2回目。
グローバルの旅行市場は、拡大。問題は国内市場?
星野 Yahoo! JAPANでは、旅とか旅行の占める割合は大きいですか?
安宅 それは検索に占める割合ですか。将来のビジネスに占める割合ですか。
星野 ビジネスにおいて占めるカテゴリーの重要度ですね。
安宅 今のところ小さいです。
星野 私は1990年に父親の仕事引き継いだのですが。あの時は大手旅行代理店からと電話でほとんどの予約が入って来た時代でした。ところがそのうち突然インターネットというのが世の中に生まれ、お客様と私たちは直接結びついた。それまでパンフレットを作っていたのだけれど、これからはパンフレットを作らず、ウェブサイトを持てばお客様が来てくれると。
サイト上から予約が入ってくるので一生懸命やっていたら、その間に、じゃらんや楽天トラベルだけでなく、エクスペディア、トリップアドバイザーと、次々と予約サイトが増えていきました。各予約サイトとのやりとり、出稿やメンテナンスなどの手間が膨大になり、旅行代理店と電話だけのときのほうがよかったんじゃないかと大混乱になって。
安宅 今は、どんなふうですか。直予約が多いんですか?
星野 星野リゾートは直予約をがんばっている方ですね。施設によりますが、施設全体の4、5割ぐらいが直予約です。予約サイトがたくさんありすぎて、お客様もわからなくなっているかもしれません。
今はさらにメタ・サーチエンジンが出てきて大変です。カヤック(KAYAK)やトリバゴ (trivago) などですね。
安宅 トリバゴですか。
星野 その客室を1番安く予約できるサイトが出てくるものです。トリバゴはエクスペディアが所有していて、横断検索です。オンライン旅行代理店が出している客室を検索して、並べるわけです。株主だからと言ってエクスペディアを優先しているわけでもない。
そういうメタ・サーチエンジンが出てきたのです。星野リゾートは今まで自社サイト以外では販売チャネルを絞ってきました。あちこちの予約サイトや旅行代理店に出すと手間ひまばかりが多すぎるからです。深くきちんと取引ができるところに絞ってました。
しかし、メタ・サーチエンジンの場合、上位に来るには、オンライン旅行代理店にも部屋を出さないといけないなど、難しい世界です。旅行市場は伸びていて、インターネットの利用率も高い。世界規模では旅行カテゴリーはトップに来るんじゃないですか?
安宅 旅行って年に1回か2回しかしないじゃないですか。
星野 いや、そんなことないですよ。
安宅 出張が含まれているのですかね? それを含めば桁が一つ変わってきますね。
星野 それも大きいですが、伸びからいうと、プライベートの観光が伸びています。日本人市場ではなく世界的な市場でです。世界では中間層が増加してますから、旅行に行こうという人たちが増えてきているんですね。出張は逆に減っています。実際にそこに行かなくてもテレビ会議などで済んだりしますからね。
安宅 出張はなくなるべきです!(笑)。
最終的には、すべてそこに行かなくても完結できるようになりますよ。今でもMicrosoft社のホロレンズ(HoloLens)というのがあるんですが、それを装着して会議に出れば、同室でいる感覚でできます。ただ5G環境が欲しいですね。Wi-Fiがあればほぼ大丈夫です。
技術の進歩でつまんない出張なんてゼロになる日がくるはず。旅は楽しいものだけに。
星野 ここにいなくても、その人がいるようにこの場に映すことができるということですか。
安宅 はい。空間に空間が重なって入ってきます。
ホロレンズはぜひ体験してみる価値があります。ヘッドマウント・ディスプレイなんですけど。3,000ドルぐらいで売っています。途方もないです。
空間にオブジェクトを固定すると、後ろから見ることも、下から見ることもできる。遠隔にいる人にここに座ってもらうことができます。彼らが実際に作っているアプリケーションならば、遠隔にいるその人の同僚までも呼び出せるんです。
星野 それで観光にも行けちゃったりすると、まずい。
安宅 いや、それまで含めても、観光はなくならないだろうと言いたいんです。
星野 そういう商品が出てくるのは間違いないでしょうね。100%じゃないけれど、体験の30〜50%ぐらいはできる。実際の旅に比べればコストもかからないだろうし。「7割ぐらいの体験を10分の1のコストでできます!」なんて、どこかがやりそう(笑)。
安宅 バーチャル旅行ですね。電話ボックスみたいな処に入って。意外とコストかかりますけど、まあできますね。ただインタラクティブといっても限界があるので、自分が行きたいようには進めない。さっきの話で例えるなら、「大阪のおばちゃん」が出てくるとしてもいつも想定内の同じおばちゃんが出てきます。
星野 同じおばちゃんだけれども都市が選べたりするかもしれないですね。世界のおばちゃんに会えるみたいな(笑)。
安宅 それは新しい旅行になるな。
星野 それは脅威というよりも、その場に実際に行ってみたくなることの価値が増す可能性もありますね。
安宅 本当にそうですよ。
星野 その時に今までと同じことをやっていてはダメだということもあるかもしれない。旅の現場では、そういうことを含めた違う体験を用意しておかないとですね。
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