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2023.02.01

ライフ

AIを知る人がライブを推す理由。星野リゾート代表とYahoo! CSOのAI対談


当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら

星野リゾート代表・星野佳路がゲストを招いて話を聞く対談シリーズ。今回は『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』の著者としても知られる情報学者、脳科学者の安宅和人さんとAIをめぐる対談の2回目。1回目はこちら

バーチャルが超リアルになっても「ナマ」にはかなわない。

星野 実際にYahoo! JAPANでは、どんなふうにAIを使っているのですか?

安宅 はい。うちの事業は大きくいうと、2種類あります。1つはメディア的事業。ニュース、天気とか検索などのメディアがあって、それらを広告の収益で支える。もう一つはコマース系の事業。ヤフオクとかショッピング、旅行系のものですね。実際に商品を売って、ペイメントも利用してもらう。

前者は大量にAI的なものを使っています。そもそもメディア事業の中核の一つである検索というのは、AIの化け物のようなものですし。

たとえば、検索ワード、文脈から意図を解析するところはAI的な情報処理が多面的に入っています。提供する情報も事前に解析して、意図に合わせて意味的にマッチングする、これらはAI以外の何物でもありません。

また、例えばメディアでニュースが流れてくる。あれは実は人それぞれに流れてくる情報が違っています。

その人の過去の行動に合わせて、学習が行われていって、その人が見るものを設定する。飽きられないように最適化する。そこですごくAI的な技術を使っています。

毎日何千と情報元から送られてくるニュースの写真も様々な形がありますが、これを適切に画面に合わせてくり抜くのにも先ほどのdeep learningの技術を使っていたりします。

さらに広告のマッチングですね。これもAI以外の何物でもない。リアルタイムでマッチングします。ある人が見ている、ある場面の瞬間に合わせて、100ミリ秒ぐらいのタイミングで、広告の在庫とあてていくわけです。今の行動と過去の履歴から想定される関心を予測して、あてる。これは完全にAIの仕事です。

実はコマースのレコメンデーション、商品検索した際のリスティングも購買予測に基いて組まれています。カートに入れる予測まで、AI的に行います。この会社の事業は行っている情報処理的に見れば、本当のところほぼAIなんです。

広告やショッピングのレコメンデーション機能は、もっとも身近なAI。ヒトとモノにまつわる嗜好を分析して、在庫とマッチングさせていく

広告やショッピングのレコメンデーション機能は、もっとも身近なAI。ヒトとモノにまつわる嗜好を分析して、在庫とマッチングさせていく。


星野 そういえば、私はここのところ何を検索してもスキーの広告が出てきます。

安宅 完全にリターゲティングされていますね。

星野 みんなもそうなのかな? と思ったら全然違うっていうから。

安宅 私もカメラばかり出てきます(笑)。

星野 なんでこんなにマニアックな板を広告しているのだろうと思っていたのですよ。

安宅 明らかに星野さんの興味嗜好が読み込まれていますね。

星野 それはすごいよね。

安宅 (笑)。ですね。おそらくネットでご覧になっている広告の多くがGoogleかYahoo! JAPANの在庫です。でも、過度に興味を読み込んでマッチングさせると気持ちが悪いし、不快ですよね。

広告の場合、メディアと違うのは、イグザクト・マッチ(exact match)をあえて避けるようにしないといけないのです。過度にぴったり合わせると、気持ち悪いと思われてしまう。それともう一つ、その人の見えていない関心を当てられない可能性がある。そうなると広告の価値が落ちます。

幅は広めにしておいたほうがいいということです。かたや検索というのはそのものズバリが出てこないと意味がない。レーザービームのようにピンポイントで合わせないといけない。

実は仕組み的には同じようなことをやっているですが、目的に合わせてユルさをあえて変えていたりするということです。

星野 ぴったりだと気持ちが悪いというのは、よくわかります。

安宅 レコメンデーションは全く違うロジックが4つか5つあります。ざっくりいうと、人であるかモノであるかということで分かれています。

その人に合わせるレコメンデーションというのと、ものに合わせるレコメンデーションは違うのです。人にあわせるレコメンデーションは狭い。特定の人の嗜好や過去の行動に合わせることをやりすぎるとあまり意味がないことが多い。

モノに合わせるというのは何かというと、あるモノに関心を持っている人は、他にどういうモノを欲するのかという個々の膨大なデータがあります。

若干想像を絶していますが、これを買っている人がなぜかモノ同士は関連性のないあるモノを買うことが多い。そのような時に、理解不能なレコメンデーションが起こるのはそういうわけなのです。

星野 なるほど。私たちの商品「旅」をレコメンデーションするヒントがそこにあるような気がしてきました。


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