新卒で就職したのはメンズのスキンケアブランドを扱うメーカー。百貨店で美容部員として働いた。やがて、「君が勧めてくれるなら信用して買うわ」という客が現れるほどの信頼を得る。
「男性の肌って、じつはけっこう繊細なんです。乾燥もしやすいし、髭剃りのダメージも受けます。女性はメイクをすることによって、紫外線などから肌が守られているんですよ」。
大阪で5年間働いたのち、東京に異動した。その後、「販売員より商品開発のほうがお客様の肌の悩みに応えられるんじゃないか」と思い、昨年10月、アルファブルに転職。ひとりで商品開発を担当することになる。
「『MULC』シリーズができて2年ぐらいになりました。立ち上げ当時、アイテムは眉毛のラインを整える「アイブロウペンシル」とニキビ跡や目元のクマを隠す「ナチュラルBBクリーム」しかありませんでした」。
しかし、現在はこれだけのラインナップ。
今回の推薦人、広報担当の鬼丸智紗愛さんは言う。
「福本が入社してからの1年弱で16商品も増えました。中には前のメンバーが下地を作ったものもありますが、彼女の推進力は本当にすごい。
しかも、単にアイテム数を増やして売り上げを上げればいいという考え方ではなく、肌の悩みを抱えている方に対して、どのようにアプローチできるかについて常に考えているんです」。
「福本の言動が面白いから、いつも笑っています」と鬼丸さん。
沙夜香さんにいちばん思い入れのある商品を聞いてみた。
「9月12日に発売した、まつ毛美容液『アイラッシュセラム』、眉毛美容液『アイブロウセラム』ですね。この商品はメーカーに依頼する際に使うコンセプトシートの作成から試作まで、すべて私が担当した思い出のアイテムです。特にこだわったのは容器です。まつ毛・眉毛美容液はチップタイプの容器を採用しています」。
まつ毛や眉毛の形に悩んでいる男性は多いという。
商品開発にあたっては、まず男性の肌の悩みについてリサーチする。そのうえで、どんな商品を作るかについて打ち合わせを重ねるのだ。
「化粧箱、パフ、容器、ラベル、バルクと呼ばれる中身など、すべてメーカーさんが違います。取引先は10〜15社ぐらいあります」。納得のいくまで試作を繰り返すそうだ。
それぞれ別のメーカーに発注。
「MULC」シリーズのパッケージは白を基調にしているが、これは男性が受け入れやすいようにシンプルなデザインを目指したため。かつ、高級感も意識している。
また、ひと口に白といってもさまざまな種類があり、「参考品を提示して色を指定」「サンプルを数種類提案してもらう」「イメージのすり合わせを行う」「再度試作をしてもらう」という4つの工程で色味を決定している。
同じ「白」でも微妙に色味が異なる。
「さらに、容器の素材が違うと同じように色が乗りません。メーカーさんに発注して、サンプルが届くのが2週間後。この試作を繰り返して、納得の行くものができたら製造へ。これでまた何カ月もかかります」。
バルクが紫外線の影響を受けないようにするために、透明の容器には、すりガラスのようなフロスト加工を施すこともある。
バルクと容器の相性を考えて設計することも重要。
開発担当者としては、バルクの試作品を自分の肌に塗ってみることも仕事のひとつだ。
9月5日に発売した「MULC 収斂美容液」のバルクの試作品を塗る。
アイブロウペンシルの断面は涙型で細い側と太い側がある。これによって、眉頭から眉尻まで、どちらも描きやすい作りになっている。
眉毛の形を少し整えるだけでも、顔全体の印象がキリッとするそうだ。
なお、取材当日は写真を撮られる気満々で出社してきたアルファブルのメンバーがいた。「MULC」シリーズを全部購入している小林拓美さんだ。
「今日は『MULC』のアイブロウペンシルで眉毛を描いてきました。日常的に描くわけではありませんが、美容に対する関心は高いほうだと思います」。
美容意識が高い小林さん。
沙夜香さんに仕事以外のことも聞こうとしてみたが、どうしても美容の話になる。
「大阪時代にパーソナルトレーニングのジムに通っていたんですが、当時の担当さんが週に1回東京に来てくれるので、その日の状態に合わせてメニューを組んでもらっています。自宅でもできる範囲でトレーニングを欠かしません」。
パーソナルジムの様子。
理想のメンズコスメを開発しながら、自身も健康かつきれいでいたいという沙夜香さん。最後に読者へのメッセージをお願いします。
「MULC」はメイク・ユー・ルック・クール、「あなたをかっこよく見せる」という意味。
[取材協力]アルファブルhttps://alphable.co.jp