▶︎すべての画像を見る プロ野球の世界から身を引き、実業家としてセカンドキャリアをスタートさせた“ハンカチ王子”こと、斎藤佑樹さん。
彼がボールを置き、まず手にしたのはカメラ。
自分の感じるがままにシャッターを切り続け、現在は全国の主要都市で写真展を開催するまでに至った。斎藤さん
「なんで写真を撮っているんですか?」。 斎藤佑樹●1988年生まれ。群馬県出身。早稲田実業学校高等部3年時に夏の甲子園で優勝し、早稲田大学進学後も4年間を通じて活躍する。2011年にはドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団。2021年に現役引退し、同年12月に株式会社斎藤佑樹を設立。現在は「野球の未来づくり」をテーマに活動しながら、CM出演、野球解説、コラムの執筆、写真展の開催など幅広く活躍中。
引退試合の直後、斎藤佑樹はなぜカメラを手にしたのか
引退試合の翌日、斎藤さんはカメラ片手に北海道のある場所を訪れた。最初に撮影したのは“なんてことない道”だ。
それを感じるがまま、思うがままに撮影したところ、これまでとは異なる印象の風景が写真に収められていたという。そして、気付かなかった世界に気付くことができたという。
斎藤愛用のソニーαシリーズ。
「もともと自分の投球フォームを確認するためにカメラを使っていましたが、いざ引退となったとき、
このカメラで投球フォームを撮ることはないんだなぁとしみじみ思ったんです。だったら今度は自分の人生の記録としてカメラを使おうと考えました。
いざ写真を撮ってみると、これまで野球以外に目を向けることが少なかったことを実感しました。素直に感動して、気が付いたら夢中でシャッターを切っていて……それが、僕にとってはいい時間だった。世の中にあるものにはすべて意味があるんだなと。大きな気付きでした」。
そのときの感動は、斎藤さんの写真に対する意識をも変化させた。カメラは、
単なる記録用から自身の心情をアウトプットする手段になったのだ。
こちらは、ボールを握る自身の手元を写した一枚。
「今まで撮っていた写真は、誰かにその場の状況を的確に伝えるための記録でしたが、僕が今撮ろうとしているのは、見る人の感性に訴える写真。
人によっては自分の幼少期を思い出すかもしれないし、何かを成し遂げて成功したときを想像するかもしれない。一枚の写真から、いろいろと想像してもらえるような作品を撮りたい。今までスマホで撮ってきたものとは明らかに意味が違います」。
甲子園の優勝や神宮大会での歓喜を経験し、プロでは分厚い壁に跳ね返されてきた。人とは違う栄光と挫折を経験してきたからこそ、伝えられるものがあると斎藤さんは信じている。
「優れたカメラマンはたくさんいらっしゃいますし、技術だけでいえば僕は底辺だと思っています。でも、
ほかの人には撮れない、僕だからこそ撮れる写真を撮りたいんです」。
そして斎藤さんは、自身の作品を多くの方に見てもらう写真展の開催を決断する。
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