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必要に駆られて手に取ってみると……

ジョイックスコーポレーションに入社後、さまざまなブランドと向き合い、数々のアイテムを目にしてきた。商品企画に携わることも増え、10年ほどが経ったとき、手にしたのがこの黒のバギーズである。



「僕の記憶が確かなら、これはバギーズシリーズ初となるブラックカラーだったはず。私にとってはこれが“初パタゴニア”と言っていいかもしれません。当時はとにかく、動きやすい無地のナイロンパンツが欲しかったんです。

今でこそ、この手のパンツはたくさんありますが、当時はほとんどなかったし、何より、あのパタゴニアという点にも惹かれました」。

実は、ナイロンパンツへの渇望は当時の仕事内容によるところが大きかったという。



「とにかく移動が多く、出張も日常茶飯事。このバギーズがまた移動時に楽チンで、機内やホテルで過ごす際に重宝したんですよ。

もう頻繁に活用していました。黒を最初に買って、次に好きな赤を買いました。この赤がすごく気に入っていて、手持ちの古着ともとにかくウマが合う。いなたい雰囲気でもパンチの効いた赤を合わせることで華やいで見えますから。

よく柄モノを選ばれている人もいますが、僕の場合、トップスは古着のスウェットやTシャツしか着ないので、どうしてもデザイン面でアクの強さが出てしまう。それこそ“横綱”って書いてあったり、柄物のちょっとふざけた、とにかくダサいデザインに魅かれるんです。なので、基本的にパンツは無地しか履きません」。



この日、袖を通していたスウェットも、アメリカ物のヴィンテージである。

「もともとはヘルスニット的な立ち位置の大定番的ブランドで、今はなくなってしまったメーカーの一着です。いなたい感じにまた柄モノだと、クセが強過ぎてファッションとして成立しないと思います。あと、全体的にアウトドア感が出過ぎないように気をつけていますね。実際にアウトドアはしないですから(笑)」。

また、商品企画に従事する笠原さんならではの視点も。



「僕はバックを持たないのでお尻のポケットは必須。これはボタンがあるから安心ですよね。あと僕たちモノ作りの立場から見て、すごくこだわっているなと思うのがそのボタンの色」。



「生地の色と何気に合わせているんですよね。細かい部分ではありますが、そうそうできることじゃないんです。副資材として探す際、黒いボタンはすぐ見つかりますし、それをあてがえば楽ではあります。

ただ、生地の色に合わせるとなるといろいろ面倒なんです。おそらく、これは特別に生地の色に合わせて作っているのではないでしょうか。ですから、それだけ手間も増える。小さいところですけど、そこかしこにこだわりが見えますよね」。


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