リクルートもゼロベースなどにこだわっていなかった
以前、私が所属したリクルートは新規事業立案の活性度で有名な会社でした。そこにはR-ing(RECRUIT INNOVATION GROUPの略)という社内ビジネスプランコンテストがあったのですが、その際に過去の提案書は「すべて」見ることができました。
そして、多くのチームが過去の「惜しい」企画を再構築して、また新規事業企画として提案をしていました。
また、人材や住宅等々、各領域の事業開発担当者による「新規事業立案セミナー」も開催され、過去の新規事業開発の歴史やそこから得られた教訓などを教えてもらえる機会もありました。
他にも、過去のR-ingの落選アイデアなどを経営企画の方々が漁って「これは少し手直しをすればよいビジネスになるのでは」というものを掘り出し、その後大事業になったものもあります。
このように、リクルートの各新規事業は個が勝手に生み出したものではなく、会社を挙げての総力戦だったのです。
インプット!インプット!インプット!
新規事業開発のような「クリエイティブ」とされていることに関しての話は、どうしても「ゼロベースで考えろ」とか「まっさらな発想で」とか「過去に囚われず」とかが接頭辞につくのですが、まずはその考えから改めてはどうかと思います。
おそらく新規事業開発のメンバーたちに最初にやってもらうべきことは、一にも二にも大量のインプットです。
過去の新規事業チャレンジの歴史、なぜトライしてなぜダメだったのか、やらなかったアイデア、他社の動向等々、学ぶべきものは大量にあるはずです。
この世で最もクリエイティブなはずの学者や研究者も、最初にするのは先行研究を徹底的に洗うことです。
むしろそれをしなければ、一体何が新しいことなのかがわからないからです。
この世にはわからないことは無限にある
繰り返しになりますが、「新しい観点からの発想を活かそう」とするために、過去のものを見せないというのはやめましょう。
子供の教育場面ならまだしも、最終的に出した価値のみが評価される厳しいビジネスの世界で、車輪やピタゴラスの定理などを再発明・再発見する必要など1mmもありません。
既に分かっていることをガンガン教えてしまっても、まだまだこの世にはわからないことは無限にありますから、インプットしすぎると頭が固くなるなどというのは杞憂です。
勉強している人ほど、「勉強すればするほど、世の中にはわからないことが多いことがわかる」とよく言うものです。
未開の最前線の仕事をメンバーにしてもらうためにも、リーダーにはそういった姿勢が必要なのではないでしょうか。