「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは…… 本日の相談者:商社営業職「『心理的安全性』の大切さがうたわれて久しいですが、私もチームとしてお互い意見を尊重するフラットな組織になるよう意識してきました。
その結果、なんとなく“ぬるま湯”な組織になってしまったような気にもなります。自分が若いときの上意下達な組織よりは良いアイデアが出ているとは思いつつも、ときどき不安になります」。
アドバイスしてくれるのは……そわっち(曽和利光さん)1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。
そもそも「心理的安全性」とは
「心理的安全性」(psychological safety)とは、ハーバード大学の組織行動学者エイミー・エドモンドソンが提唱した心理学用語で、「このチームは、ほかのメンバーが、自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰を与えるようなことをしない確信が持て、対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」を指します。
Googleのプロジェクト・アリストテレスという社内リサーチで、「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、多様なアイデアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が2倍多い」と報告されたことで改めて脚光を浴びた概念です。
「切磋琢磨」がないなら「心理的安全性」とは違う
さて、このような「確信が持てる」とか「信念」とか「メンバー間で共有」という定義から考えると、チームメンバーの一員であるご相談者自身が「ときどき不安になる」とおっしゃっている時点で、少し怪しい気がします。
また、「ぬるま湯」とはおそらくどんな稚拙なアイデアでも批判されない「ぬるい状態」ということでしょうが、心理的安全性の高いチームでは「切磋琢磨」のイメージで活発に議論がなされて、出されたアイデアに対して本質的で健全な批判がバンバン出てくるものです。
そう考えると、ご相談者のチームは心理的安全性を獲得できていないのかもしれません。
「ぬるま湯」チームができるまで
エドモンドソンは心理的安全性を阻害する不安として、「無知だと思われる不安(Ignorant)」「無能だと思われる不安(Incompetent)」「邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)」「ネガティブだと思われる不安(Negative)」の4つを挙げています。
そして、無知だと思われたくなければ質問をしなければよい。無能だと思われたくなければアイデアを出さなければよい。邪魔をしているとかネガティブだと思われたくなければ批判をしなければよい。
このような心理が働けば、心理的安全性の「ない」チーム、「ぬるま湯」なチームの出来上がりです。このような流れが思い当たるのであれば、それは心理的安全性とは真逆の状態です。
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