「ストレートな批判」は日本人にとって高いハードル
そして実は、日本人は心理的安全性を獲得するのに不利な特性を持っています。それはネガティブフィードバックをストレートに伝えることが世界一嫌いということです。
エリン・メイヤー「異文化理解力」(英治出版)によると、日本は否定的なフィードバックに伝える際、世界でいちばん間接的に伝えることを好む国でした。
しかも、加えて、物事を話す際に、わかりやすく明快に話すのではなく、言外の含みを持たせて相手に空気を読んでもらい、あうんの呼吸で理解してもらうことを好む度合いも世界一とのことでした。
これでは切磋琢磨で健全に批判しにくいのも当然です。ものすごく実感があります(笑)。
働き方改革、リモートワークがさらに壁となる
それでも、私のような昭和な日本人たちは、飲みニケーションだとか、長時間労働で一緒に時を過ごすとか、タバコ部屋の雑談だとかで、なんとか壁を乗り越えて、本音を語り、慮り、心理的安全性を作ってきました。
しかし、今は働き方改革で時短の時代となり(よいことですが)、リモートワークの浸透(これもよいことですが)で雑談もなくなり、そういう機会は少なくなりました。
オンラインコミュニケーションも今はまだテキスト、言語中心で、「言葉にしない」ことは存在しないことです。
これらは不可逆な進化ですから、この時代で日本人が心理的安全性を獲得するには新しい能力やスキルを身につけなければなりません。
まずは個々人の「アサーティブネス」を身に付ける
それは、「アサーティブネス」と言われる「相手も尊重したうえで、率直に誠実に自分の要望や意見を相手に伝えるコミュニケーションスキル」です。
「アサーティブネス」とは直訳すれば「主張」ですが、日本語だときつい印象があるせいか(上述の国民性からでしょう)あえてそのまま英語で呼ばれています。
例えば、「事実を基づいて考え、話す」「説得をするのではなく、共感を得る」「命令をするのではなく、提案をする」「自分の気持ちを感情的にならずに正確に表現する」など、たくさんの細かいスキルの集合体が「アサーティブネス」のスキルです。
こういううまい主張スキルをまず身に付けるべきではないでしょうか。
「うまく相手を批判する力」を磨きましょう
まとめますと、心理的安全性を実現するために必要なのは、空気を読んだり、協調したりすることが得意な日本人にとって容易な「ほかのメンバーを攻撃しない」ことばかり追求するのではなく(意識せずとも既に自然とやっているかもしれません)、逆説的に聞こえるかもしれませんが、自分の考えや意見をどんどん打ち出していくのを追求することではないでしょうか。
自分の意見をしっかりと言うことや、攻撃的にならないように相手の意見に健全な批判をすることに注力するということです。
これができればその後のお互いの意見を尊重することは得意なのですから、心理的安全性獲得への道は近づくことでしょう。