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2022.08.13

ライフ

「かわいい子には旅をさせよ」は本当! 最近わかってきたポジティブツーリズムの価値



当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら

星野リゾート代表・星野佳路が立教大学現代心理学部の教授・小口孝司とメンタルヘルスツーリズムについて対談。

今回は中編。何やら旅が子供の成長に、ましては仕事での能力向上にまで役立つようで、そうした旅をポジティブツーリズムと呼ぶのだとか……。(前編はこちら

冒険心を満たし、能力を伸ばす

星野 メンタルヘルスツーリズムについてはこれまでのお話でだいぶ分かりました。要するに、旅は疲労を回復すると。旅には冒険心を満たすという目的もあると思うのですが、それはまた違う旅になるのですね。

小口 おっしゃるとおりです。メンタルヘルスツーリズムは疲労回復のほうで、冒険心を満たす旅はポジティブツーリズムということになります。

星野 ではポジティブツーリズムの概念を、わかりやすく説明してもらえますか。

小口 ポジティブツーリズムとは、個人の幸福感、能力、創造性などを向上させる旅行です。たとえば生産性が上がるとか、新たな考えが浮かぶとか、さらにはストレスに強くなるというと、わかりやすいでしょうか。言わば、“伸ばす旅”です。

個人の能力を伸ばすという意味で、旅が大きな効果を果たすことが実証されています。ですから、旅行は、遊興ではなく、目的をもったものともなるのです。



星野 能力を伸ばす!

小口 はい。ポテンシャル、能力を伸ばすという意味でも旅が役立つのです。

クリエイティビティ、ストレス耐性も上がります。ポジティブツーリズムを体験することで、困難な状況になったとき、自信になっていくのです。自己効力感というのですが。

星野 たとえばどんな旅の中身があればいいのでしょう。

小口 その一つとして、自分の能力を発揮できるような海外ボランティアに行って、貢献する。そうすると能力が上がって、意欲も向上する。実際、そういうことを始めている企業もあるのです。

仕事と関係ないことでも「できた!」という感覚が能力向上に

星野 そのポジティブツーリズムに、われわれがどう積極的に関わっていけるかだな。星野リゾートはいろいろできるんじゃないかという気がするけど。

小口 宿を提供するだけではなく、地域の特性も加味した企業プログラムの開発もできますね。日本人の場合、余暇で自分の能力を上げるような活動をするとストレスに強くなることが、私の研究室が行ったいくつかの研究で共通して示されています。

何かについて自分が向上しているという気持ちを持つと、精神的にリフレッシュされて、回復し、創造性も上がるのです。

星野 何か仕事に関係ないことでもいいのですか。

小口 もちろん。たとえば「乗馬をする」というアクティビティがありますね。上達するとリフレッシュして、創造性が上がって、職業満足度が上がり、さらには人生満足度まで上がるのです。

星野 なるほど、自分の仕事に関係がないことでも、他のことで向上することによって仕事も向上すると。そういう意味でいえば、星野リゾートにはスキースクールがあります。

「星野リゾート トマムスキー場」には初心者から上級者まで多彩なレッスンでスキルアップをサポートする「スノーアカデミー(レッスン)」を用意。

「星野リゾート トマムスキー場」には初心者から上級者まで多彩なレッスンでスキルアップをサポートする「スノーアカデミー(レッスン)」を用意。


小口 できないこともできるようになる。自分はできるんだぞ、という感覚をもつことが大事なんです。企業研修ってあるじゃないですか。1日缶詰になってセミナーを行うよりも、旅のプログラムを展開した方が、はるかに効果があるのではないかと思います。しかも費用は同じですから。

星野 確かにね。よくオフサイトミーティングというのがあって、大企業がマネジメントスタッフを集め、わざわざ本社から離れたところへ行って、3日も4日も滞在して会議をするのです。

でも午後はフリータイムがあったり、夜は会食やパーティーがあったり。海外では、本社と近隣のレストランやバーを借りてやるよりはるかに効果があると言われています。

小口 それは視野が広くなるからだと思うんです。日常とは異なるところへ行って話すと、感じ方、考え方も変っていろんな発想ができるからでしょう。社員旅行が、最近、また少しずつ復活しています。昔とは形態が大きく変わってきて、企業にプラスに働くことが実感されているからだと思います。

星野 チームビルディングとかそういう考え方ですか。

小口 それもあります。北海道のある会社で、違う部署の人たちで6人以上のグループをつくって、特別有給で休暇と旅費をもらって旅行をするという制度があるのです。

星野 おもしろいですね。

小口 調査をしたのですが、特別な旅行休暇があり、社員を旅行に行かせている企業はそうでない企業より業績がいいし、定着率も高いのです。企業は利益の一部を社員のために還元することで、社員はストレスが減り、能力も向上するのです。それによって、企業はさらなる発展を遂げられるはずです。

さらに、旅行経験が多いほど、企業における人事評価も高いという研究結果も得られています。

星野 過去の形態が問題なのではなく、今のニーズにあわせた感覚が必要だということですね、社員旅行も。もともと歴史的に制度化されていたこともあるし、その形態の内容を変えていけばいいわけだから。


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