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2022.06.19

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ミドリムシがジェット燃料になる未来。星野リゾート代表が迫るユーグレナの真価

当記事は「星野リゾート」の提供記事です。元記事はこちら

ユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏と星野リゾート代表の星野佳路氏による対談。

前編に続き今回は中編をお届けします。

ミドリムシの生体に迫る!

星野 で、ミドリムシだけど、栄養があることを知っているのは、世界では常識なんですね?

出雲 そうです。皆さんはご存じないですけど、農学部の農芸化学で栄養の勉強をしている人はみんな知ってます。

星野 なるほどなるほど。だから培養して人工的に作る、だけど増やすことがとても難しい。

出雲 できないんですよ。栄養価の高さゆえに、培養している間にどこからかバクテリアやプランクトンが来て食べちゃうから。

星野 効率が悪いということですね。

出雲 もうずっとそれを繰り返してきたんですね。研究は、基礎研究と応用研究があり、実際に社会貢献するための社会実装の3段階があるんですけど、ミドリムシはずっと研究止まりで、一般社会にデビューする日は来ないと、みんな思っていましたね。

星野 なるほど。それで研究自体は長く続いたんですか。

出雲 もうずっと!本当に大御所のような先生が延々とやって、相当お金も使って、当時の科学技術庁とか通商産業省から大変なお金をいただいていた。こんなマニアックなことを知っている人は少ないと思うんですけど、「ニューサンシャイン計画」という計画があったんです。

「万が一、オイルショックの後、食料が輸入できなくなったときに、みんなミドリムシを食べて生き延びて、地球温暖化の原因になっているCO2もミドリムシの光合成で削減させて、さらにはミドリムシからバイオ燃料を取り出して、日本の悲願である国産エネルギーを創り出そう」という計画です。

真面目に通産省が計画を立てて、研究をして、それで10年経っても20年経っても培養ができなくて、「ミドリムシの屋外大量培養は不可能」と言われていたのです。

星野 この栄養価はすごいから、国家プロジェクトとして進めようという時代があったということですね。

出雲 そうです、そうです。だから知っている人は知っている。

星野 私たちは知らないわけだけど、こんなに栄養価があって、こんなにすごくて、だけど長年国家プロジェクトになっているぐらい大事な話だったのに、なかなか培養できないという。そこがネックになっていたということ。

それを出雲さんがブレークスルーするということなんだけど、今回実際にバイオ燃料製造実証プラントや石垣島にあるユーグレナ社の生産技術研究所で学びましたけど、そこには、ユーグレナ社の数々の秘密が隠されていまして。どうやって培養しているかってね。

出雲 私が研究をしたのは5年間ですけど、それは、これまで研究を続けられてきた先人の肩に乗らせていただいてやっただけですから、本当にもうゴール直前でバトンが回ってきて。当時、私と創業メンバーの鈴木の他に、ミドリムシを研究している同世代の若い人はいなかったんです。

星野 簡単に言うと、みんな無理だと思っていたということでしょう?偉い人たちや、これだけ頭脳明晰な人たちがさんざんやって無理なんだと。だけど、出雲さんがそれを引き継いで、無理でもやろうと思っていたのが、例のバングラデシュの話に戻るのですね。

出雲 そう。バングラに私が持っていかなきゃいけないから。諦めている場合じゃないだろうと。

星野 そのとき確信があったんですか?何となくこれいけると。私ならいけるみたいな。

出雲 いや、だって、“はたち”ですよ。20歳だったら何か、何でもできる気するじゃないですか。

星野 そうかもしれないけどね。で、そこから5年ですね。ブレークスルーは銭湯の中で思いついたんでしょう?うち(星野リゾート)は風呂屋、温泉旅館だから。(皆に向かって)大浴場の中で思いついたらしいですよ。

星野 ミドリムシみたいに、液体の中に自分が浸かっているときに思いついたんですね。

出雲 そう、ぱっと。私は全部そうです。

星野 それがブレークスルーの秘密なんですよ。

出雲 でも、お風呂に入ったらひらめくというわけじゃないですよ。これも順序があって、頭がちぎれるまで実験して、考えて、実験して、考えて、もうへとへとになって…。

当時、ミドリムシの屋外大量培養について、ミドリムシを研究している日本中の大学や研究所を回って、一人一人に会いに行っていました。

お金がないから、日本中夜行バスで移動していたんですね。夜行バスって、大体何か高速道路が空いていると、早く着き過ぎちゃうんですよね。

で、大学の先生って9時にならないと大学に来ないので、6時とかに着いちゃったら、時間あるわけですよ。どこに行っても、お風呂に行って時間つぶすしかないんですね。

だから私、日本中のバス降りたところのお風呂屋さんは、今でも全部頭に入っています。お風呂に入って、今日その先生とどんな研究の、どんな話しようかなというのを考えているときに思いつくんですよ。

星野 出雲さんは20歳から25歳くらいまでの間に体験しているじゃないですか。一般的には、アスリートも、ミュージシャンも、アーティストも、24〜25歳になると、これで食っていけるかな?と、ちょっと不安が出てくるじゃないですか。

その頃になると、自分のレベルが分かってくるし、たどり着けるゴールが見えてくる。研究者もずっと結果が出せないままでて、ブレークスルーも見つけられず、不安はなかったですか?

結果がすぐに出なくても諦めずにミドリムシの研究を続けるという‘研究者’マインドに感心する星野氏。「研究魂は次世代にも引き継ぐもの」と出雲氏。

結果がすぐに出なくても諦めずにミドリムシの研究を続けるという“研究者”マインドに感心する星野氏。「研究魂は次世代にも引き継ぐもの」と出雲氏。


出雲 いや、それは面白いですね。そんなこと考えたことなかったです。今41歳で、まだ培養方法を思いついていなかったらということですよね。

星野 そうそう。恐らく41歳までそのままやり続ける人ってなかなかいないと思うんですけど。研究者の世界って、たどり着けるかどうかわからないものを必死に研究しているという。

出雲 はい、そうですね。研究と言うのは、自分が生きている時にたどり着けるかどうかはわからないんですよ。みんなそれを分かってやってますから。

で、特に魂の記憶じゃないですけど、日本は石油が採れなくて苦労してるじゃないですか。だから日本で科学研究している人で、バイオ燃料に興味がない人はほとんどいないと思います。

星野 次世代にちょっとでも進化させて引き継ごうと。

出雲 研究は一世一代とか、そういう短いスパンでは考えてないんです。私は、たまたまバトンが回ってきたときにデビューが決まったようなもの。だからミドリムシについては、本当に責任重大なんです。

星野 なるほど。今、一つ思いついたんですけど、逆に出雲さんのブレークスルーによって、ミドリムシの研究者が若者の中で増えてきている現象はあるんですか?

出雲 あぁ、そうですね、ミドリムシの研究者……。でも実際に、ミドリムシや藻類の研究者がうちの会社に来ることは多いですね(笑)。

星野 なるほど、そうか。

出雲 アメリカにもいるんですよ、ミドリムシの研究者。ジョン・ベネマン教授とかいい先生がいるんですけど、日本に比べたら遅れていますね。 何でか、分かります?

星野 風呂がないから(笑)。

出雲 ああーっ、惜しい!それも、そう、大浴場がないから(笑)。二つ目が、今日既に星野さんも正解を言っていましたよ。星のや竹富島のプールは、四角いと西洋に見えると。水たまりの丸で、竹富島っぽいプールになったというお話をさっきしてくれたんです。


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