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披露した曲はKOHEI JAPANの『Go to Work』。「男なら働け 空にはばたけ」。自分でラップなどしたことのない私だったから、いきなり同僚の前でラップをさせられ、恥ずかしさ大爆発だったが、Doncaは私を辱めたかったわけではない。

「『はたらけ』と『はばたけ』で韻を踏んでいるのね。そこの部分に特徴的な音調が聞こえるわ。分析したら面白いんじゃない?」とアドバイスをくれた。

次に問題となったのは、分析の技法だ。Doncaが言っていた「韻では、似たような子音が組み合わされる」ということが日本語ラップでも成り立つという感触はすでに持っていた。例えば上記の宇多丸さんの「バースデー」=[baasudee] と「待つぜ」[matsuze]の韻を考えてみよう。

読者にも自分で発音して確認してもらいたいのだが、[b] と[m]は発音するときに両方とも両唇が閉じる。[s]と[ts]が近い音であることは、発音記号の表記からも明らかであろう。[d]と[z]もどちらも舌先を使って発音する。

けっとばせ:get money の美しさよ

また、もう何百回聞いたか分からない『MASTERMIND』でMummy-Dは「けっとばせ」とget money(「げっとまね」)で韻を踏む。[kettobase] vs. [gettomane]。子音のペアに注目すると、[k]-[g]、[t]-[t]、[b]-[m]、[s]-[n]すべてのペアで「口のどの辺を使って発音するか」が一致しているのだ。

あまりに美しすぎる韻だし、今回も自分で発音してみて確認してほしい。[k]と[g]では口の奥が閉じる。[tt]-[tt]は同一の子音だから、まぁ置いておこう。[b]と[m]は両方とも、両唇が閉じる。[s]と[n]は舌先を使う。素晴らしい。

しかしである。これらの例をもって上記の「日本語はラップに向いてない説」に反論したとしても「都合のいい例ばっかり持ってくんじゃねーよ、ばーか」と言い返えされるのは目に見えている……。




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