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2022.07.18

ライフ

「同期の出世を素直に喜べない」40代が知るべき、出世の“二大条件”と“最大の支援者”


「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……

本日の相談者:43歳、IT系営業職
「私と同期入社のAくんとは同じ営業職に配属され、管理職への昇進も同じタイミング。互いに切磋琢磨してきたのですが、Aくんが先日の株主総会で取締役への就任を承認されました。

自分のことのように喜ぶべきですが、素直に喜べないのは、私の人間が小さいからでしょうか」。
アドバイスしてくれるのは……

そわっち(曽和利光さん)
1971年生まれ。人材研究所代表取締役社長。リクルート、ライフネット生命保険、オープンハウスにて人事・採用部門の責任者を務めてきた、その道のプロフェッショナル。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(共著・星海社新書)ほか。

年齢が上がるたびに出世したい人は減っていく

パーソル総合研究所のビジネスパーソンを対象とした調査によると、「出世したいと思わない」人の割合が「出世したい」人を上回る年齢は42.5歳でした。

同社の分析では、年齢を追うごとに、出世コースから外れる人と役職・階級を上り続ける人の差がはっきり分かれるためとのことでした。ご相談者は43歳ということで、ちょうど自分が出世コースから外れた、と思える時期なのかもしれません。

それぞれの人生ですのでどちらがよいとは一概には言えませんが、多くの人が「もう出世なんてしたくない!」と諦めていく中で、同期の出世を見て「なにくそ!」と思う相談者は、私は意欲的でよいのではないかと思います。(出典:https://jinjibu.jp/article/detl/hr-survey/2672/

成果を出せば出世できるわけではない

そもそも人が出世したりしなかったりするのは何故でしょうか。

私は、自分自身は企業で出世したわけでもないので大きなことは言えませんが、人事実務家やコンサルタントとして長年裏側からどういう人がどうして昇進をしていくのかを見てきました。

そこでわかったのは、出世をするには2つの条件があるということです。

ひとつ目は、当然ながら、何らかの成果を出しているということです。今の仕事で成果を出せていないのに出世するということはほぼありません。実際、多くの企業の昇進ルールには「定期評価の過去◯回分の平均が◯点以上」という条件があります。

しかし、これだけでは出世することはできません。

自分を引き上げてくれる人がいなければ出世できない

出世に必要な条件のふたつ目が、「その人を引き上げる人がいる」ということです。

こちらも実際、多くの企業昇進ルールとして「上司の推薦」と「昇進検討会議での決議」というプロセスが必要とされています。

機械的に「こういう成果を残せば出世」となるような企業はほとんどありません(新人や若手の昇進だけはほぼ自動的に決まるところが多いのですが)。

つまり、自分の実力を認めてくれて、さらに「こいつを出世させてやろう」と思う人がいなければ、どんなに成果をあげていたとしても、出世することなどできないのです。

先に出世したAさんは彼を引き上げようとしてくれた人がいたのではないでしょうか。

「陰徳」は報われると限らない 



そこでご相談者に聞いてみたいのは、自分のことをちゃんと経営幹部に知ってもらう努力をしてきたかということです。

ゴマすりではありません。単に、自分がやってきた成果をアピールしてきたかということです。もしかすると「真面目に仕事をして成果を残していればきっと報われるはず」と思ってはいませんでしたでしょうか。

「陰徳を積む」という言葉があるように、自分のやったことを「すごいだろう」と言い回ることは、日本人はあまり好ましく思いません。

ですが、せっかく成果を残しているのに評価されず、不服に思いながら過ごして、そのうち出世の意欲も減っていくというのはもったいないことです。

同期の出世はチャンスとも言える

ご相談者は、今はライバルに負けたという気持ちになっているかもしれません。このままでいくと、多くの人のように「もう、出世なんてしたくない!」と思うことで自己正当化してしまうかもしれません。

しかし、少し待ってください。同部署配属の同期が取締役になったということは、自分をよく知る人が経営幹部になったということです。

これまでなら、自分を知ってもらうために、上司や経営陣へアピールする必要があったのですが、これからは、既に自分のことをよく知っている人が経営陣の中にいるのです。

つまり、これはご相談者が出世しやすい状況になったということなのです。

出世して孤独になった同期をサポートしてみては 

よく言われることですが、人は出世をすればするほどどんどん孤独になっていきます。

組織のピラミッドを上がっていくと、同じ階層にいる人はどんどん減っていくので、同じ目線で物事を考えてくれて、わかりあえる人が減るからです。

先に出世したAさんは、うれしい気持ちと同時に不安を抱えているはずです。そこで、これまで彼と切磋琢磨してきたご相談者は、職位は違えども相談相手になれるはずです。

先に出世されて悔しいかもしれませんが、そこはぐっと押さえて、むしろAさんの支援をあなたが積極的にすることで、Aさんはあなたの今後の出世にとっての最大の支援者になってくれるかもしれません。

同期が出世するなんてうらやましい



「この年次の社員から経営幹部が多く生まれた」となると、それを「当たり年」と呼ぶ企業が多くあります。

つまり、経営幹部が同じような年次の人たちで構成されていたりすることは珍しくないということです。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

私はその理由は、これまで述べてきたように、同期が出世すると、先に出世した人の同期も出世しやすくなる素地ができるからではないかと思います。

そう考えると、自然に先に出世した人を応援しようという気持ちになりませんか?ちなみに私はリクルートが採用数を極端に絞っていた時期に入社したので、絶対数が少ない分、社内で出世した人は多くありませんでした。

それで、私はリクルートでは出世できなかった――というのは嘘です(笑)。実力がなかっただけです。そんな私にはご相談者はうらやましくてなりません!


グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

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