ヤナセクラシックカーセンターが出展していた1995年式のメルセデス・ベンツE320。走行距離は1万5348kmで車検2年付、価格は税込み400万円とのこと(筆者撮影)
ヤナセクラシックカーセンターは、100年以上もの間、輸入車の国内販売を手がけてきたヤナセのグループ企業であるヤナセオートシステムズが2018年4月に新設した組織だ。
ヤナセが長年蓄積してきた旧車の修復・復元技術をクラシックカー愛好家に提供することを目的とし、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンなどの旧車を復元する事業を行っている。
今まで手がけた車両には、昭和の大政治家である吉田茂元首相が愛用した1963年式の「300SEラング(W112)」など、貴重なモデルも数多い。
クラシックカーの復旧には時間がかかることも多いが、2022年4月現在までの約4年間で、レストアやエンジン調整、メンテナンスなど、手がけた車両は約120台にのぼるという。
比較的新しいモデルのレストアも実施
同センターでは、こうした30年以上前に生産された、いわゆる「オールドタイマー」だけでなく、前述のヤングタイマーと呼ばれるクラシックカーとしては比較的若い車両のレストア作業も行っている。
だが、前述のとおり、平成バブル期などに人気を博したモデルは、純正部品が生産終了になっている車種もある。
旧車の世界では、メルセデス・ベンツのクラシックカーなら部品はいまだに供給がある、というイメージが強いだけに意外だ。
1989年式のメルセデス・ベンツ190E 2.5-16V エボリューション1。走行距離は12万2000kmで、価格や車検2年付で1980万円となる(筆者撮影)
ヤナセクラシックカーセンターの担当者によれば、「メルセデス・ベンツは、人気が出てくれば旧車の部品再販を開始するが、すべての車種には対応していない」という。
前述のW124でも、例えばモデル末期の1995年式(平成7年式)といった比較的若い車種に関しては、樹脂バンパーなど供給されていない純正パーツもあるそうだ。
また、1982年に発売されたコンパクトクラスの190クラスなども同様で、初代W201の樹脂製バンパーは純正部品が手に入りづらく、レストアがかなり困難になることもあるという。
窒素シールドプラスチック溶接機とは
窒素シールドプラスチック溶接機の外観(筆者撮影)
こうした課題を解決するために、同センターが2021年頃から導入したのが、アメリカの企業ポリバンス社の窒素シールドプラスチック溶接機だ。
これは、PP(ポリプロピレン)やFRP(繊維強化プラスチック)、ABS樹脂など、樹脂製バンパーに使われている材質と同じ材質を棒状にした溶接ロッドを、窒素ガスを含んだ高温の温風を出す溶接トーチで溶かし、割れた箇所などを文字どおり溶接する機械だ。
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