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新しい価値観を持つ王道実用車

この車の全長は4500mmなので、トヨタだったらカローラ・クロス、吉野家だったら牛丼・並盛にあたる、実用車の王道ど真ん中のサイズだ。

買い物から家族の送り迎え、週末のお出かけまでカバーする、言ってみれば日用品。それでいながらこんなに凝ったデザインにするあたり、「art de vivre(アール・ド・ヴィーヴル)」というフランス語の言い回しを思い出す。

英語にすればアート・オブ・ライフ、日本語に訳せば「素敵な生活」とか「自分らしく暮らす」といったニュアンスだ。

牛丼だってお気に入りの素敵な器に盛ったら、自分だけのごちそうになるということ。

そしてこのモデルに、プラグイン・ハイブリッド仕様が加わった。無音・無振動のモーターと、シトロエンらしいふんわり軽い乗り心地の組み合わせが、新しい時代の乗り物だと感じさせる一台。

満充電だと65kmのEV走行が可能なので、走行距離が少ない平日は夜間に充電し、電動自動車として扱える。そして週末に遠出をするときには、効率的なハイブリッド車に早変わり。

燃料費の出費と、CO₂排出の罪悪感を軽減してくれる。

つまり、ル・クルーゼやクリストフルの器に盛ったヴィーガンミートの牛丼とでも言いたい、唯一無二の個性的な存在なのだ。

モータージャーナリスト
サトータケシ
フリーランスのライター/編集者。愛車である2010年型のシトロエンC6と、’22年型のC5エアクロスは、仕組みがまるで違うのに乗り心地が似ていてびっくりしたとか。

“らしさ”全開のPHEV

シトロエン。名前だけでうっとり、というマニアもいる。車好きの間でも“カワリモノ”イメージが強い。昔は特にそうだった。

でも今はどう? フランス人もフツウに乗りこなしているはず。彼らが特殊かどうかは別にして。

それこそ特殊だった頃のシトロエンを何度も試乗して、そのうち何台かは実際に買ったこともある筆者には、最近のモデルは随分と間口が広くなったように見える。

このC5 エアクロスのようにプラグイン・ハイブリッド車まで存在して、最先端でもある。妙な偏見などもう捨ててもらって、より多くの方々にも試してほしいものだ。

ただし、最新で“フツウ”なC5 エアクロスでも、とってもシトロエンらしい点があった。それは乗り心地の良さ。

ほかのブランドではまずお目にかからない、たぷんたぷんのシート。柔らかさと安定感をギリギリまでせめぎ合わせてセッティング完了となったアシ回り。これらの融合こそシトロエン。

「何、乗っているの?」と聞かれて「シトロエン」と答えるのって、ちょっと心地良かったりもする。お高いブランドのように偉そうではなく、かといって街に溢れた車名でもない。

こだわりと洒落っ気をほどほどに感じさせる。まぁ、妙にディープな会話に発展するおそれは多分にあるけれど。

モータージャーナリスト
西川 淳
フリーランスの自動車“趣味”ライター。得意分野は、スーパースポーツ、クラシック&ヴィンテージといった趣味車。愛車もフィアット500(古くて可愛いやつ)やロータス エランなど趣味三昧。


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