パテック フィリップ的、ヴィンテージの再解釈とは?
「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2022」で脚光を浴びた、パテック フィリップの新作。それは“ヴィンテージスタイル”を標榜する4本の時計だ。いわゆる“復刻”と一線を画す、卓越したウォッチメイキングを解説したい。
現代的ヴィンテージスタイル
1893年に創業されたパテック フィリップは、これまで時計の歴史に名を刻む数々の傑作を生み出してきた。
スイスのジュネーブにある「パテック フィリップ・ミュージアム」では膨大な数のアーカイブが展示され、これらの資料性の高いタイムピースはパテック フィリップの時計製造におけるインスピレーションの源になっている。
「カラトラバ 5226」18KWGケース、40mm径、自動巻き。451万円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109)
今年で誕生から80周年を迎えた「カラトラバ」の最新作として登場した「カラトラバ 5226」は、ヴィンテージから多大な影響を受けつつも、驚くほどモダンな顔立ちに仕上げている。
第一の特徴に挙がるのは、アンティークカメラの外装を彷彿させる凹凸感のあるのテクスチャーを採用したブラック・グラデーションの文字盤だろう。
こだわりが凝縮された文字盤は、中央から放射状にグラデーションを描く。
とりわけヴィンテージテイストを演出しているのは、シリンジ型と呼ばれる注射器のような形状の時針・分針にある。
これらは1940年代頃の腕時計で見受けられるデザインであり、秒針やアラビアンインデックス、ミニッツサークルと合わせてベージュカラーで統一されている。
パテック フィリップを象徴するクルー・ド・パリ模様のギョシェ装飾を側面に施した18Kホワイトゴールド製ケースは、このモデルのために新たに製作されたものだ。
ケースの側面には小さなピラミッド状のクルー・ド・パリ模様が3段で刻まれている。
装着されたヌバック仕上げのベージュのカーフスキンストラップ以外に、付属するエンボス加工ファブリック柄のブラックのカーフスキンストラップに付け替えることで表情が様変わりする。
ブラックのストラップに交換すると、時計全体が一段とスポーティに引き締まる。
このようにパテック フィリップが培ってきた伝統を融合させることで最新のカラトラバ・スタイルが完成したのである。
話にはまだ続きがある。
カラトラバ 5226と共通のデザインコードを持ち、最新の自動巻きムーブメントの搭載により、パテック フィリップ初となる年次カレンダーとトラベルタイムの2つの機構を統合した「年次カレンダー・トラベルタイム 5326」は早くも絶大な人気を集めている。
「年次カレンダー・トラベルタイム 5326」18KWGケース、41mm径、自動巻き。888万8000円/パテック フィリップ(パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター 03-3255-8109)
多彩な表示機能を備えた文字盤のレイアウトは完璧なバランスを誇る。
12時位置の曜日と月付、6時位置のムーンフェイズと日付は年次カレンダー、中央の24時間針、4時位置のホームタイム、8時位置のローカルタイムはトラベルタイムの機能に基づくものだ。
日付表示が現地時刻に同期する実用性も秀逸だと言わざるを得ない。
さまざまな表示を瞬時に読み取れる秀逸なダイヤルデザイン。
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