サステイナブルな取り組みに対する日本人のポテンシャル
高水準のニット製造技術を誇る中国の工場に製作を依頼。
最初のコレクションではニット5型とアクセサリーを製作。’20年秋冬シーズンの展示即売会という形式で発表した。
製作に着手したのはその年の夏だというから、わずか4カ月ほどでコレクションが完成したことになる。
工場には多彩な編み方を実現する最新鋭の編み機が揃っている。
「残糸を使うということは、既に原料があるということ。だから早い(笑)。そして我々は初めに実寸サンプルを作って工場に送ってしまうので、上がってきたサンプルも最初でほぼOKの出来栄え。
長く付き合っている工場ですから、お互いの理解度も高いですし」(澤木さん)。
工場での最終工程。ニット一枚一枚に手作業でアイロンがけを施す。サステイナブルな視点ばかりに拘泥することなく、服としての美しい見た目もきっちりと追求。目の肥えた服好きも納得の仕上がりだ。
短期間で無駄なく無理なく服を作る。そして自社のECサイトで直接販売する。アパレル業界は長大なサプライチェーンが常識とされてきたが、ライテンダーのモノ作りはとことんシンプルだ。
「シンプルですが、安価なものを作ろうとは思っていません。良いものを作り、ブランドとしての価値を高めていきたい。
きちんとした経済活動を続けなければ、工場をはじめとしたサプライヤーにきちんと還元できませんから。
みんなで少しずつ利益を共有する。それが、これから先のビジネスで最も重要な点だと思っています」(澤木さん)。
表地がウール、裏地がコットンという凝った素材の「ファーストセーター」。1万8000円/ライテンダー info@ryetender.com
「誰もが長く着られるデザインの服を作っていきたいですね。結局それがいちばんサステイナブルなので。
またほとんどのアイテムがジェンダーレスで、サイズも2サイズしか用意していません。当初は我々も不安だったのですが、ありがたいことに毎シーズンほぼ在庫を抱えることなく売り切っています。
残糸を使って作った服が余ってしまったら、それこそ本末転倒ですから」(小池さん)。
新作のニットパンツ「カナルパンツ」。裾丈は自分の脚の長さに合わせてハサミで切ってしまってOKという、画期的なパンツ。それでもほつれない独自の編み方で作られている。1万7000円/ライテンダー info@ryetender.com
今後は自社サイトやSNSを通じ、製作現場とコンシューマーの相互理解が深まるようなコンテンツを発信していきたいという。
それは服作りそのものにフォーカスしたものというよりは、もっとお互いを身近な存在に感じられるようなもの。詳細は未定だが、例えば工場の従業員が普段食べている昼食を紹介する、といったイメージだ。
「今着ている服は、確かに存在している誰かが作ったものなんだと、改めて感じてほしいんです。
服にストーリーが付与されれば、その服をより大切に着てもらえると思うので」(小池さん)。
「今後生まれるすべてのビジネスにおいて、サステイナブルの視点は欠くべからざるもの。ただ、シリアスに思い詰める必要もないと思っていて。
というのは、日本人にはそもそも英語に置き換えることのできない“もったいない”という感覚が備わっています。
今はサステイナブルの過渡期ですが、日本人のポテンシャルに照らして発信を続けていけば、いつか必ず日本らしいサステイナブルが完成するはずだと信じているんです」(澤木さん)。
RYE TENDER ライテンダー
創業年:2020年8月
CEO:澤木雄太郎
ディレクター:小池勇太
本社所在地:東京・世田谷
Sustainable Keywords
・高品質な残糸でニットアイテムを製作
・ジェンダーレスデザイン
・相互理解のためモノ作りに携わる人たちをフォーカス
(※1)OEM 他社ブランド製品の製造およびその企業のこと。アパレル産業では工場や、製造をワンストップで請け負う企業を指すことも。