「知らないと怖いカラダのサイン」とは…… 毎日、当たり前のようにしている「おしっこ」。
「おしっこがきちんと出るということは、腎臓という工場が正常に稼働している証拠。しかし、年齢を重ねていくうちに、工場のラインのどこかに異常が起こる場合があり、尿は点検ランプのように我々にその異常を知らせてくれるのです」。
そう語るのは、みうら泌尿器科クリニックの院長を務める三浦徹也先生。今回のテーマは、おしっこが教えてくれる病気のリスクについて。
話を聞いたのはこの人! 三浦徹也●みうら泌尿器科クリニック院長。医学博士。神戸大学大学院医学系研究科博士課程修了後、18年にわたって泌尿器科診療の第一線で治療に従事する。2021年に兵庫県神戸市に同院を設立。日本泌尿器科学会専門医、指導医。https://muc-kobe.jp/
注目すべきはおしっこの「色」
――そもそもなぜ、おしっこの色は変わるのでしょう? 色は水分量によって変化します。水分をたくさん摂取すれば尿の色は薄く透明に近くなり、反対に水分量が少なくなると尿は濃くなり、赤褐色に近い色になります。
ちなみに褐色とは暗めの茶色といえばわかりやすいでしょうか。脱水症状になると、赤褐色のおしっこが出るのはそのためです。
――朝イチのおしっこがいつも「赤褐色」なのですが。 それは正常です。就寝中、脳は抗利尿ホルモンを分泌して、腎臓という工場に「おしっこを作るな」という命令を出します。
なぜなら、寝ているときにおしっこが出ると眠りが妨げられるから。つまり、睡眠中は抗利尿ホルモンによって腎臓のはたらきが最小限に抑えられるため、尿の量は少なくなります。
そのため、起きてすぐの尿の色はかなり濃くなり、赤褐色になるというわけです。
――では、逆に朝イチのおしっこが「透明」ということは……? あまりよくありません。前述した抗利尿ホルモンの分泌量が、加齢や生活習慣の乱れなどによって低下していることが考えられます。
そうなると、睡眠中もどんどん尿が作られるため、色も薄く透明になるんです。また、夜間に何度も排尿のために起きる「夜間頻尿」という症状の原因にもなります。
「赤」「白」「濃い黄色」はカラダの警告ランプ
――では、いちばん危険なおしっこはどんな色ですか? もっとも危険度の高いサインは「
赤」です。ピンク、赤、赤味がかった黒の場合、血尿の可能性が高いでしょう。これは腎臓から膀胱や尿道のどこかで、出血が起こっているということ。
血尿には大別して2つのケースがあり、「
痛みを伴う血尿」と「
痛みを伴わない血尿」があります。このうち痛みの伴う血尿では、
尿路結石や前立腺炎、尿道炎(性病)などの感染症が疑われます。
一方の痛みを伴わない血尿は特に注意が必要で、
腎臓や腎盂、尿管、膀胱、前立腺の悪性腫瘍の可能性があります。
いずれにせよ、赤い尿が出た場合は、速やかに泌尿器科医に相談してください。
――ほかに危険な色は? 白っぽく濁っている尿の場合は、性感染症による尿道炎、具体的にいうと
淋菌性尿道炎、クラミジア性尿道炎、マイコプラズマ性尿道炎の可能性があります。また、前立腺炎などの
尿路感染症や尿路結石の場合も白っぽい尿が出ることがあります。
また、
「濃い黄色」「黄色がかった褐色」といった尿が毎回出る場合も要注意。これはビリルビン尿の可能性があり、
肝臓や胆のう、膵臓に重大な病気がある場合に出ることが多いです。
ただ、こうした場合、皮膚や目の色に黄疸症状が起こって黄色くなるため、そちらの変化で異常に気付くケースがほとんどです。
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