「知らないと怖いカラダのサイン」とは…… 最近「おしっこの色が変わった?」「むくみやすい?」と思ったとき、真っ先に気にかけてほしいのが腎臓だ。
「腎臓病は静かに進行し、最後は死のリスクが高まる問題に直結する。それがサイレントキラーと呼ばれる所以です」。
腎臓内科医の菅沼信也先生は、避けては通れない病気になりうるからこそと、警鐘を鳴らす。
話を聞いたのはこの人! 菅沼信也●腎内科クリニック世田谷 院長。臨床腎臓病学を専門とし、腎臓病および人工透析医療に携わる。腎臓内科医としてのメディア出演歴も多数。
国民病と呼ばれる、慢性腎臓病
――腎臓の病気は、そんなに身近なのでしょうか? いまや
日本人成人の8人に1人が「慢性腎臓病(CKD)」にかかっていると言われています。高血圧や糖尿病といった生活習慣病の患者さんが増えているのに比例して、同じく増加傾向にある病気です。
――なぜ生活習慣病と関連があるのでしょうか? 腎臓はとても細い血管が集まった塊でできており、血管に悪影響を及ぼす病気は腎臓にも大敵です。例えば塩分の取りすぎが引き金となる高血圧は、血管が硬くなる「動脈硬化」を起こします。
腎臓の血管は特に細いので、動脈硬化が起こるとさらに血管が細くなり、腎臓に十分な血液が行き渡らなくなるために腎臓の機能は低下します。
このほかにも不規則な食生活や運動不足が引き起こす糖尿病、脂質異常症といった病気も、腎臓の機能を低下させるメカニズムがあり、すでにこのような生活習慣病を抱えている方は、確実に“慢性腎臓病予備軍”といってよいでしょう。
――決して他人事ではないですね。慢性腎臓病とはどんな病気でしょうか? 尿たんぱくといった腎臓の異常や腎機能の低下が3カ月以上続いている状態を、慢性腎臓病といいます。治療をせず、腎臓の機能が高度に低下した「慢性腎不全」になるまで放っておくと、人工透析や腎移植が必要になる恐れがあります。
個人差はありますが、透析患者さんの余命は、健常な方の半分の年数であるのが現実です。
――死にも直結する病気なんですね。 そのほかにも気付かないままに突然
心筋梗塞や脳卒中を引き起こすこともあり、全身に影響を及ぼす病気です。そういった理由から、腎臓病は“サイレントキラー”と呼ばれています。
しかし、わずかながら体のサインはあるもので、その
兆候は尿や体のむくみに現れることがあります。
尿の色や泡立ち、むくみが発する腎臓のSOS
――尿ではどんなところをチェックすれば良いでしょうか? まずは尿の色です。正常な方の尿は透明な黄色ですが、
赤く褐色がかっている場合は血が混じっている「血尿」の状態かもしれません。そのような場合は尿路結石や悪性腫瘍も疑われますし、腎臓病のひとつである「腎炎」の可能性もあります。
――尿の色が大切なんですね。最近、尿が濁っていることがあるのですが、これも注意が必要ですか? しばらく続くようなら尿路感染症、悪性腫瘍が隠れている可能性があるので、泌尿器科受診を検討したほうが良いでしょう。
また、特定の食品の摂りすぎにより尿が濁ることがあります。ほうれん草のようなアクの強い野菜・ココア・バナナなどに多く含まれるシュウ酸、動物性脂肪の多い肉類などのたんぱく質を過剰摂取すると、尿中にシュウ酸カルシウムの結晶ができやすく、尿が白濁することがあるのです。結石リスクが高い状態ですので、ぜひ食生活を見直してください。
また“尿が泡立つ”、またその泡がなかなか消えない場合は、尿たんぱくが多く出ている状態がありえます。
――尿が泡立っていることもよくあります! こちらも続く際は、診察を受けることをお勧めします。
血尿が出ていて、さらに尿の泡立ちもある場合は、腎炎の可能性が高まります。その場合は、体のむくみも気になる状態がありえます。
――腎臓病だと、なぜむくみが出るんですか? 尿たんぱくが多いとむくみやすくなり、腎不全に至ると、余分な水分や塩分を排泄できなくなって体に溜め込んでしまうため、むくみやすくなります。
脱いだ靴下の跡、頬に着いたマスクのゴム紐の跡がなかなか取れないという場合は、まさしくむくみが原因と考えられます。
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