しかし、そこで問題になるのが、自宅がマンションのケースだ。戸建て住宅であれば、家主の意思で充電設備を導入できるが、マンションは家主が所有権を持つ分譲でも導入のハードルが高い。共有設備となるため、管理組合の総会で住民の合意を取り付ける必要があるためだ。
普通充電器の導入にかかる費用は工事代を含めて1区画あたり数十万円。現状ではまだEVの所有者自体が非常に少ないため、ほとんどの住民にとって、EV用充電器の導入は「今の自分には何のメリットもない設備投資」でしかない。当然の如く、そのために修繕積立金を充当することに住民の合意を得るのは難しい。
自らの体験から起業に至る
こうしたビジネスチャンスを見出し、起業した企業もある。2018年設立のユアスタンドは、マンションや職場での普通充電器の導入・運営をサポートするベンチャー企業だ。
社長の浦伸行氏自身がマンション暮らしでEVを購入し、充電の煩わしさを体験したことから起業に至ったと言う。
マンションの屋内外や地下の駐車場など、あらゆる場所に充電器を設置することができる(写真:ユアスタンド)
同社が提供するのは、充電設備の運用に関わるサービスだ。EVを所有する住民は専用のアプリであらかじめ充電器を利用する時間を予約し、アプリ上で決済もできる。
充電サービスの利用料は、設備導入コストや電力会社に支払う電気代を勘案して1時間あたりの料金を管理組合が決めることができる。3キロワット出力の充電器で1時間あたり100円前後、6キロワット出力で1時間あたり180円前後に設定されることが多いという。
収入のうち9割は管理組合に入り、残り1割をユアスタンドが運用代行手数料として徴収する仕組みだ。実際に充電設備を使用する住民が支払うサービス料で初期投資を回収する設計で、こうすることによって全住民の理解を得やすくしているわけだ。
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