雪山に立つ3人の男。場所はフランス・シャモニー、1958年に撮られた一枚である。
©️Nakaya Ukichiro Foundation 撮影:中谷芙二子
中でもひと際目立つ、オフホワイトの上下にベレー帽、ウェリントン型のサングラス姿の男こそ、雪山のヒップスター・中谷宇吉郎である。
北京での冬季五輪でも多くのアスリートが信頼を寄せるスキーブランド「
フィッシャー(FISCHER)」もリスペクトする中谷宇吉郎とは何者なのか?
世界で初めて、人工雪を作った人
中谷宇吉郎をひと言で説明するなら「世界で初めて人工雪を作った人」だ。
中谷の故郷、石川県加賀市片山津には彼の功績を讃える「雪の科学館」がある。そこに展示されている“雪を作る”装置。
雪の結晶の写真を撮りまくり、形の違いから40種類ほどに分類。
そこから結晶が生まれる大気中の水蒸気量や温度などの条件を紐解き、地上でそれを再現する装置を制作。ついには、本当に人工の雪結晶を作ってしまった。1936年のことである。
撮影した結晶のガラス乾板写真。貼ったメモから「1935年に札幌で降った天然雪」だとわかる。
それから85年以上が経った今、連日テレビを賑わせている北京での冬季オリンピック。
そのスキー競技の会場である張家口はゴビ砂漠の隣町。ゆえに雪はほとんど降らないエリアだが、それでも競技ができる背景には、人工降雪機や造雪機などの技術がある。
そのルーツには、中谷宇吉郎の雪や氷への基礎研究があるといっても過言ではないのだ。
雪の科学館館長の古川義純さんは札幌からリモートで。中央は、フィッシャーの事業責任者・小田島賢さん。
そうした研究に世界屈指のスキーブランド・フィッシャーがリスペクトを捧げるのは至極当然。
中谷の功績を改めて振り返るイベントとして去る1月16日、彼の故郷・石川県加賀市片山津でトークセッションを開催した。
元アルペンスキーヤーとして世界中の雪を見てきた小田島さんが最新のスキー板について解説。「当時、この板があれば中谷先生の研究もずいぶん楽だったはずです(笑)」。
「雪の教室」をテーマに、雪の科学館館長の古川義純さんをリモートで招いたその模様は今、フィッシャーのブランドサイトで
公開されている。
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