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2018.05.19

汎用性を求めるSUV。正しい選択のために知っておくべきこと



Quality 0f CAR LIFE向上委員会
何人乗りか、積載量はどれだけか。「乗る」 量はクルマのひとつの価値ではあるけど、何よりもまず、 乗らなきゃいけないのはキブンじゃないのか? キブンが乗るクルマはいいクルマ。そんなクルマ選びを、 自動車評論家の島下泰久さんと突き詰める。高めよ! Quality of CAR LIFE

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SUVは「Sport Utility Vehicle」の略。日本語に訳すと「スポーティな多目的車」ってことで、アクティブなオーシャンズ読者にはまさにドンピシャなクルマ。とはいえ、選び方を間違えると遊びに行ける場所が限られてしまう、なんてことも!?

そうならないために重要なキーワードなのが「WD」。クルマのスペック表に4WD(四輪駆動)や2WD(二輪駆動)と書かれているあれだ。

「あれ? SUV=四輪駆動じゃないの?」と思う読者も多いかもしれないが、実はひと言でSUVといっても、この駆動方式はさまざま。ではどう選べば良いのか? 島下さんに教えてもらった。

 

そもそもSUVには4WDと2WDがあるって知ってた?


最近はSUVが人気ゆえ、4WDじゃなく2WDのSUVも続々登場している。当然4つのタイヤに力を伝える4WDのほうが、2つのタイヤに伝える2WDよりも雪道や悪路での走破性では有利。一方で2WDは、4WDシステムがないぶん軽量なため燃費がいいというのが特徴だ。

「未舗装道路のある山やウィンタースポーツに頻繁に行く人なら4WDを、街乗りが中心なら2WDのほうがオススメです」と島下さん。

とはいってもボディの地上高が高いSUVなら、2WDでも多少の積雪や石にボディが引っかかって進めない、なんてことは少なくなる。「2WDでも大きなタイヤをはいてボディの地上高が高ければ、車高の低いクルマよりも断然走れますよ」。

ただ最近は、ボディの地上高やタイヤサイズは普通車と変わらず、エクステリアだけSUV風にしているモデルもあるので、用途によって確認が必要だ。

2WD車に乗る際に注意すべきこと


それは、「“前後どちらのタイヤが回っているか”を知っておくこと」だという。「先日、都心で大雪が降った際に、前輪が駆動する2WD車なのに後輪にチェーンを巻いている人(あるいはその逆)を時折見かけました。

それでは雪道を掻くことができないので、自分のクルマが2WDなら前後どちらを駆動させて走るのかは把握しておきましょう」。

4WDにも「フルタイム」と「スタンバイ」の2種類がある


さて、4WDにもいろいろ種類がある。大きく分けると、常に4輪を駆動させる「フルタイム4WD」と、必要なときだけ4WDになる「スタンバイ4WD」の2種類だ。

フルタイム4WDなら「たいていどこでも行けます」と島下さん。一方スタンバイ4WDは「通常は2WDなのでフルタイムと比べて燃費がいい」のがうれしい部分。しかし「昔のスタンバイ4WDは前輪が滑ってから急に後輪に力が伝わるため、クルマの挙動が不安定になるなど、評判が良くありませんでした」。

そのため雪国ではフルタイム4WD、中でも昔から4WDに力を入れていたスバルのフルタイム4WDが支持を集めていたという。

 

街乗りから雪山までこなせる。優等生になった最新の「スタンバイ4WD」


「しかし最近はこうした国内でのスバルの牙城を崩すべく各社が、雪国でも使えて燃費が良いスタンバイ4WDの開発を進め、2WD/4WDの切り替えがドライバーが気づかないほどスムーズなスタンバイ4WD車が増えています」。これなら安心してスキー場を目指すことができるし、夏の海辺の駐車場で砂を踏んでスリップ、なんてこともない。またフルタイム4WDよりも燃費がいいので、街乗りにも気軽に使える。

そこで、最新の「スタンバイ4WD」車の中から、島下さんにオススメのクルマを紹介してもらった。

 

“ランエボ”開発者が生んだシームレスな2WD/4WD切り替えは、ドリフトも可能!?
三菱 「エクリプスクロス」


274万8600円〜


三菱の最新技術を盛り込んだ「エクリプスクロス」の切り替え動作は、クルマの挙動とドライバーの操作を各部のセンサーで検知し、状況に応じて前後の駆動力を最適に配分したり、左右輪間の駆動/制動力を自動制御するという優れもの。

「2WD/4WDの切り替えが驚くほどスムーズ。しかも通常は前輪駆動なのに“ドリフト”もできるのがこのクルマの特徴です。ドリフトって普通は後輪駆動車が後輪を滑らせながら走るんですが、このクルマはスタンバイ4WDのシステムを上手く活用することで、ある程度のスピードで曲がる際、後輪を滑らせるように走ることができます。『普通の運転でドリフトなんて』と思うかもしれませんが、要するに上手い人なら自在に、そうでない人もまるで自分が上手くなったかのように操れるんです」。

「実はこのクルマ、同社がかつてラリーで勝つために作った『ランサーエボリューション』を手掛けた開発者が関わっているので、そうしたクルマを操るノウハウがあるのでしょう」。

 

一寸先を予測する、スベリ知らずなドライバーになれる2台


マツダ「CX-3」


各種センサーでドライバーとクルマの状況を検知することで、一瞬先の路面状況を予測する。233万2000円〜

ホンダ「フリード」


こちらはコンパクトミニバンだが、同社のSUVと同じく、タイムロスのない最新のスタンバイ4WDを搭載。247万2000円〜


「マツダとホンダでシステムは違いますが、どちらも『各種センサーを駆使してクルマの挙動を予測し、滑ると判断すれば4つのタイヤを駆動させてスリップを防ぐ』のが特徴です。

単純に2WD/4WDの切り替えだけでなく、センサーで『ドライバーは曲がりたいんだな』とクルマが判断すると、スムーズに曲がれるように前輪に少しだけブレーキをかけて、曲がりたい方向にクルマが向くよう最適な駆動力を前輪や後輪に配分してくれる。あるいは曲がるにはアクセルを踏みすぎだと判断すれば絞るなど、クルマがドライバーの意図を汲んでくれるので、街中を走っていてもそのスムーズさを感じることができます」。

まるで教習所の先生並みの気配りをクルマがしてくれるということだ。

 

重厚さと軽快さ、雪道や悪路の2つの正義に、2台の王者


道なき道や砂漠、凍てつく氷の道に出会っても、逃げることなく走破したい! なんて人にはやはり、常に4つのタイヤで路面をつかむ「フルタイム4WD」がオススメだ。なかでも島下さんオススメの2台は、それぞれ違うベクトルで地上最強!? だという。

トヨタ「ランドクルーザー」


岩場やぬかるみ、砂地といった地上で想定される厳しい路面状況に応じた5つの走行モードが用意され、状況に最も適した走り方をクルマが自動で行ってくれる。514万円〜


「ご存知のとおり、岩場や深雪路、段差路……。そうした世界中の悪路で活躍しているフルタイム4WD車です。このクルマの場合、圧倒的な走破性はもちろんなのですが、特筆すべきは無事に帰ってこれる“タフさ”。砂嵐の中を走っても、川にどっぷり浸かっても、バウンドしそうな岩場を走っても壊れにくい。例えばサハラ砂漠の真ん中まで行けたとして、そこでクルマが動かなくなったらどうします? 日本で4WDの代名詞的になり、世界中でベストセラーになっているのは、他車にはないタフさを備えているからなんです」。

スズキ「ジムニー」


フルタイム4WDから走行中でも2WDへ切り替えが手動で行える。街中や林道では2WDで、急な登坂路や悪路ではフルタイム4WD、というように状況に応じて選ぶことができる。129万6000円〜


「クルマは軽ければ軽いほど『走る・曲がる・止まる』性能が高くなり、燃費が良くなり……とメリットがいっぱい。だからフルタイム4WDでこのジムニーの軽さは圧倒的に正義なんです。ほかの最新4WD車なら電子制御でやるところをドライバーが判断する部分が多いため、本当に険しい道を走るにはそれなりのテクニックも必要。でもそこがまた、このクルマの面白い部分でもあります」。

 

これまで何となくしか知らなかった“○WD”の深〜い世界、ご理解頂けただろうか。人気のSUV車を検討中なら、街乗りの方にとっても重要項目、ヘビーデューティをお考えならなおさら必須項目としてチェックしてみてほしい。


■話を聞いた人

島下泰久さん●自動車ジャーナリスト。1972年神奈川県生まれのオーシャンズ世代。「間違いだらけのクルマ選び」の著者であり、他にもクルマに関する著書多数。クルマの性能、車種、最新技術からブランド論まで、クルマ周りのあらゆるジャンルをカバーする。歯に絹着せぬ物言いにも、読者をはじめ各界から“定評”があるクルマのオーソリティ。


ぴえいる=取材・文

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