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難しい話だからこそわかりやすく伝えることが重要

2021年12月に限定発売された、アディダスとのコラボレーションによるランニングシューズ「フューチャークラフトフットプリント」。カーボンフットプリントは2.94㎏/CO2eを実現。’22年春にも追加で一般販売を予定。1万3500円/オールバーズ×アディダス(オールバーズ)

2021年12月に限定発売された、アディダスとのコラボレーションによるランニングシューズ「フューチャークラフトフットプリント」。カーボンフットプリントは2.94kg/CO2eを実現。’22年春にも追加で一般販売を予定。1万3500円/オールバーズ×アディダス(オールバーズ 0800-080-4054)


さてオーシャンズには「サステイナブルの難解な話を長い文章で伝える」という宿命的ジレンマがある。できればもっとシンプルに伝えたい。そのほうが受け手の負担が少ないから。

オールバーズにも同様の思いがあり、消費者との直接的な接点となるショップのしつらえにそれが表れている。

「木材をはじめとしてできる限り天然素材を使っています。スニーカーを試着するときに使う椅子も木製。ただ、ひとりでは持ち上げられないほどの重量なので、移動がすごく大変なんです(笑)」。

買い物袋の用意はあるが、基本的には外箱のままで手渡される。オンライン販売では外箱に直接配送票を貼って送付。また希望がなければレシートも発行しない。

つまりここで買い物をすれば、内装やスタッフの対応から“サステイナブルな意識の高いブランド”だと直感的に理解できるのだ。

スニーカーを購入すると外箱に直接靴紐(無料)を通して手渡される。買い物袋の削減にぜひ協力を。

スニーカーを購入すると外箱に直接靴紐(無料)を通して手渡される。買い物袋の削減にぜひ協力を。


’20年1月、日本初の直営店として原宿店がオープン。世界的なコロナ禍のもとでのスタートとなったが、結果としてはこの年、全世界のオールバーズの店舗で最も高い売り上げを記録したのがこの原宿店であった。蓑輪さんがこう振り返る。

「日本は欧米に比べサステイナブルな意識が低いのではないか。そんな懸念は払拭されました。

買い物袋に入れなくても、クレームが発生することはほぼありません。むしろ“そのほうが全然いいですよね”と共感してくれるお客さまが多い。

原宿にやってくるような比較的若い年齢層から、少しずつ意識は変わっているのだと実感しました」。

そして原宿店に続き、’21年6月には丸の内店をオープン。日本の中心で働くビジネスパーソンのような、比較的高い年齢層の反応も上々だ。

羊毛生産から店舗販売まで、サプライチェーンの流れがひと目でわかるように描かれた大きなイラスト。丸の内店内のディスプレイだ。

羊毛生産から店舗販売まで、サプライチェーンの流れがひと目でわかるように描かれた大きなイラスト。丸の内店内のディスプレイだ。


また同じ丸の内仲通りに店舗を構える、他ブランドのスタッフとの交流も生まれている。そんな“ご近所さん”や顧客とともに、毎週水曜日に至近の皇居周辺でのランを楽しむコミュニティができているのだとか。

まさに「自分たちだけではなく、みんなで」というフィロソフィーの実践である。

ここ日本で、オールバーズのような考え方を持つ企業とその製品に共感する人たちは着実に増え、既存の価値観に拘泥する人たちと少しずつ置き換わっている。

それはつまり、サステイナブルな未来への光明だ。単なる聞こえがいい言葉ではなく、現実に見えてきた本物の光明である。

Allbirds オールバーズ
創業年:2016年
創業者:ティム・ブラウン、ジョーイ・ズウィリンジャー
本社所在地:米カリフォルニア州サンフランシスコ
店舗数:世界31店舗、日本国内2店舗

Sustainable Keywords
・温室効果ガス削減のために再生型農業を積極的に支援
・天然素材とリサイクル素材の活用
・よりクリーンな燃料・電力の使用


鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文

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