2020年9月、サステイナブルに対して意識あるファッション好きの間で、注目されたバッグがあった。
ケリー・スレーターとジョン・ムーアが手掛けるアウターノウンとのコラボという形で4型のバッグを発表し、デビューを果たしたブランド。それがニューライフプロジェクト(以下、NLP)である。
その土台にあったのは「モノ作りの原点に立ち返る」というシンプルかつ強固な哲学だった。
新たなプロジェクトの原動力は日本の職人に対する想い
「コロナ禍によって、ブランド名と呼応するように“新しい生活様式”“ニューノーマル”といった言葉が広がっていった時期でもありました。
でも僕たちがNLPを立ち上げるべく動き始めたのは約3年前、’18年のことなんです」。
そう語るのはプランナーを務める五藤利哉さん。さらに言えばプロジェクトのスタートは3年前だが、実はNLPのメンバーは筋金入りのベテラン揃いだ。
五藤さんはファッションブランドで、同じく薩本顕伸さんはバッグブランドで、ともに20年以上働き続けてきた人物。
業界で長く生きてきたそんな彼らが、ずっと疑問に感じていたことがある。それがブランド設立のきっかけだ。
「ファッション産業で最終的に主導権を握り、かつ光が当たるのは企業もしくはブランド。実際のモノ作りに関わる工場や、そこで働く職人がフォーカスされることはまずありません。さらに年々価格競争が激しさを増していくなかで、国内製造業の衰退を肌で感じていたんです」(五藤さん)。
「僕らはある意味職人さんたちに育ててもらったようなもの。だからこそ新しい形で彼らとともにモノ作りを始めて、何か恩返しができればという気持ちがありました」(薩本さん)。
大量生産、大量消費、大量廃棄に一石を投じ、モノ作りの原点に立ち返る。これがNLPの土台となるシンプルかつ強固な哲学だ。
2/3