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2022.01.22

空気や気温、風を感じられる“ユル系”バイク「ホンダ・スーパーカブ110」が今のキブン

Motorcycle Update▶︎バイクのある人生は素敵だ。お気に入りの一台に跨って、家を出るワクワク感。時を忘れてカスタムに興じる悦び。バイクを楽しむ大人たちをピックアップ!

■橋本 弘さん(50歳)



ハシモトヒロシ。WEBディレクター&デザイナーとして主に企業案件等を請け負うフリーランス。小型自動二輪免許を持つ奥さまと娘さん、そしてネコ2匹とともに神奈川県に居を構える根っからのバイク好き。

■ホンダ・スーパーカブ110(2009年モデル)



1958年に生産を開始し、今年で誕生から64年を数えるスーパーカブ。2009年モデルの110に搭載される空冷4ストローク単気筒110ccエンジンには電子制御燃料噴射装置が搭載される。

スーパーカブ伝統の、ブレーキング時にピョコン!とフロントが上がるボトムリンク式フロントサスペンションから、他の多くのバイクが採用するテレスコピック式に構造変更したことで、軽快な走行安定性と一般的なバイクと同様の操縦性を手に入れた。

スーパーカブのオリジナリティを生かしながら、新世代のカブにふさわしいモダンな曲面によるデザインを持つ。大型で丸いマルチリフレクターヘッドライトは光量・配光ともに十分なもの。

スーパーカブのオリジナリティを生かしながら、新世代のカブにふさわしいモダンな曲面によるデザインを持つ。大型で丸いマルチリフレクターヘッドライトは光量・配光ともに十分なもの。

■「レンタルで楽しむバイクライフも悪くない……」

「僕が通っていた高校は、『原付免許を取ってバイクで行かないと無理……』っていう学生が多かったこともあって、特に誰かに反対されることなく、16歳で原付免許を取得しました。

初めて乗ったバイクは、ホンダ初の2ストローク50ccエンジンを搭載した原付ロードスポーツバイク『MB5』です」。



同じく原付免許を持つ同級生とつるんで乗ったり、エンジンをバラしてみたりしてMB5を堪能し、その翌年には中型免許を取得。大学入学後に先輩から譲り受けたスズキ・RG250ガンマが中型初バイクという橋本さん。

その後、ヤマハ・RZ-1やRZ250R、ホンダ・CRM250、XR400、XR250などを乗り継いだが、大学を卒業して仕事を始める頃になると、バイクに乗る機会は大学のOBツーリングなどに行く程度に。
 
それこそ年に1〜2回と一気に減ったこともあって、バイクを所有すること自体をやめてしまったのだとか。



とはいえ、大学ではオートバイやクルマ好きが集まるクラブに所属し、卒業後もそのクラブ出身者とともにミニバイクレースに参加していたという橋本さんのバイク好きが、そう簡単に治まるわけもなく……。

「レンタルのほうが維持費もかからないし、憧れの速いバイクもあったけど、新たに購入するよりはいいかも……」と、置き場所や維持費に困らないバイクとして、レンタルのBMWやKTMなどのスーパースポーツに、何度か乗ってみたという。



「一度乗ってみたかった超ハイパフォーマンスマシン『BMW・S1000RR』に乗ったときにコンビニで立ちゴケしてしまい、なんだかんだで17万円の出費になってしまったこともありました(笑)。それでも、年に何度もバイクに乗るわけじゃないから、やはりレンタルも悪くないか……って」。

■「乗ってみると、カブって意外と楽しい!」

そんなバイクのない生活がしばらく続いた4年ほど前、「カブなんて乗ります?」と、バイク乗りの友人からカブを売りたいという話が舞い込んできた。



「何となく試しに乗ってみるとこれが意外と楽しくて、“普通にオートバイの乗り味”だったんです。以前スクーターに乗ったこともあったけど、それとはまったく違って、すごく楽しかったな」。

実は橋本さん、ホンダ・NSF100を使うミニバイクレースに30年近く出ていて、そのレースバイクのエンジンをチューンしてくれているRCRハングアウトというショップは、カブのカスタムでも有名だった。



ショップを訪れるたび、レース用のNSF100を横目に「カブも悪くないな」と少し思っていたというから、実は運命の出会いだったのかもしれない。

結局、友人から買うことになったこのカブが、現在の愛車「スーパーカブ110」なのである。

「『これでサーキットを走っても意外と楽しそう』と思い、出場できるレースはないかと調べ始めました。すると、関西で“全日本カブ耐久”という入門者向けのレースがあることを知り、一度これに出てみようと思ったんです」。

エンジン内部以外はすべて自分でメンテナンスする橋本さん。工具箱にはスナップオンのラチェットレンチやKTC・ネプロスのドライバーなど、サンデーメカ憧れの工具が入っている。

エンジン内部以外はすべて自分でメンテナンスする橋本さん。工具箱にはスナップオンのラチェットレンチやKTC・ネプロスのドライバーなど、サンデーメカ憧れの工具が入っている。


しかし、レギュレーションを読むと、出場可能バイクの排気量は50cc限定で改造範囲は吸・排気系のみ、というものだった。

「手持ちのカブは110なので、オークションで2005年式の50ccカブを新たに購入し、妻と2人でレースに臨みました。結果は……ダメダメでしたけど(笑)」

左奥のゼッケン16番が橋本さん。吸・排気系の交換もOKなレギュレーションだったが、保安部品を外してタイヤのみ交換したほぼノーマル状態で出場した初戦は、満足のいく結果は得られず……。

左奥のゼッケン16番が橋本さん。吸・排気系の交換もOKなレギュレーションだったが、保安部品を外してタイヤのみ交換したほぼノーマル状態で出場した初戦は、満足のいく結果は得られず……。


こうして、バイクのない生活から2台のカブを所有する生活に変わった橋本さん。学生時代はそれこそ、“バイクにどっぷり”だったそうだが、今のライフスタイルを考えると、バイクとの付き合い方も学生時代と同じようにはいかない。



「金銭的にも時間的にも、生活にバイクがどっぷり入り込むのはもう避けたいんです。自分の性格的に、深くハマってしまうとバイクのことばかり考えてしまうし、そうなると間違いなく仕事も手につかなくなりそうで。

レンタルバイクのスーパースポーツを使った高速道路ツーリングも好きですが、高速道路に乗れないカブでのゆるいツーリングも大好き。なので、カスタムするにしても、シートを座り心地の良いものに変更するとか、荷物を積むトップケースを付けるとかで十分です」。

以前、ホンダ・モンキー125とカブ110を旅先の旭川で借り、奥さまと2人で夏の北海道を走ったこともあるとか。



「北海道の北西部の日本海に天売島(てうりとう)っていう島があって、ここは世界でも有数の海鳥の繁殖地。7月には朝飛び立った海鳥が、夕方になるとものすごい数の群れとなって島に帰ってくるらしいんです。

この様子を妻が『ぜひ見たい!』と言い出して。島自体も小さいので、島をぐるりと一周できて、結構楽しかったなあ」。


■最後の1台を買うなら……

レンタルの速いバイクと、夫婦でゆる〜く楽しめるカブを上手に使い分ける今のスタイルに不満があるわけではない。「それでもいつかは……」と思い描く最後の一台がある。

「もっと歳を取って仕事もゆるりとしてきたら、1台買って愛でるスタイルもいいなと。その1台として考えているのはBMWのR1200GSです。



2006年のシルクロードツーリング、ウイグル自治区のカシュガルにて。バイクを停めると大勢の人が寄ってくる“海外ツーリングあるある”。

2006年のシルクロードツーリング、ウイグル自治区のカシュガルにて。バイクを停めると大勢の人が寄ってくる“海外ツーリングあるある”。


実は、2004年から2014年まで、1年おきに6回かけて少しずつシルクロードを走破したことがあるんです。

そのときに借りて乗ったバイクの中に、BMW・F800というアドベンチャー系のバイクがあって、当時の思い出とともにそのバイクに乗ったときの印象も忘れられなくて。その最上級モデルであるR1200GSが、いつか欲しいですね」。



「1台を愛でたい」と思ったときの欲しいバイクはすでに決めているけれど、今、手元に置いておきたい相棒は肩ひじ張らずに乗れるカブ。刺激的な走りが堪能したいなら、レンタルのスーパースポーツで。

ある意味“わがままなバイクライフ”を叶えるひとつの答えが、ここにあった。

山中基嘉=写真
今坂純也(DIRT SKIP)=取材・文

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