「堂本監督は上司にしたい人No.1です」
平子 今、山王戦の話が出ましたけど、土壇場で桜木がルーズボールに飛び込むシーン、あるじゃないですか。
あそこでコートにボールを残した瞬間ゴリの目線になって、晴子さんから最初に桜木を紹介されたシーンが重なるんですよね。
『スラムダンク』(30巻)
「桜木君っていうの」っていうセリフが重なった瞬間に、
当時の自分が「コレ、もしかして勝つのかな」って思ったのを覚えています。
漫画なんですけど、ドラマ的な演出というか、映像として魅せられている感じ。
酒井 ああいう演出力はスゴいよね。
平子 あと、湘北の面々が勝利に湧いているときに、
山王の堂本監督が選手たちに「『負けたことがある』というのが いつか 大きな財産になる」っていうセリフ、いいですよね。
『スラムダンク』(31巻)
僕、『男はつらいよ』が大好きで、本当にしんどいときは主題歌の2番の歌詞を思い出すんです。「
ドブに落ちても根のあるやつは、いつかは蓮(はちす)の花と咲く」っていう。それに通ずる言葉だなと。
あの堂本監督の言葉は、失敗したときに何度も救われました。僕の中で上司にしたい人No.1です。
『スラムダンク』(21巻)
酒井 僕は陵南戦の最後に、桜井が「
戻れっ!! センドーが狙ってくるぞ!!」って言うあのページ、ヤバいですね。
『スラムダンク』って桜木花道の成長の物語じゃないですか。それが象徴的に描かれているシーンだと思うんです。前回の練習試合では、同じ状況で仙道に逆転されちゃってるんですよね。だから今度は絶対にさせないぞっていう。
よく考えたら残り1秒で4点差なんで、1ゴールじゃ追いつかれようがない。それでも「
仙道にはやらせない!」っていう必死さというか、熱い気持ちが描かれている。
敗れた田岡監督も仙道も、いい表情してるし。この1ページ、ヤバいなあ。
平子 『スラムダンク』って伏線回収が見事な漫画ですよね。
山王戦の最後、無音のラストシーンもそう。シュート合宿から、流川との関係性から何まで、全部がフリで。
『スラムダンク』(31巻)
振って振って振りまくって、最後にポッと「左手はそえるだけ…」って言う。シビれますよね。実際に桜木の声として耳に届くような錯覚すら覚える。
あのひと言を生かすために無音にしたのかなってくらい、本当に耳に入ってくるかのようでしたよね。目で読んでるセリフが。
◇
チョイスの視点は違えど、ふたりの人生観がしっかり作品とリンクしているのが、実に興味深い。
この後、群雄割拠の芸能界を生き抜く上で教訓としている名シーンにまで、話は膨らんでいく。続きは次回!
「かく語る『スラムダンク』」とは……映画公開も控えたバスケ漫画の金字塔『スラムダンク』。作品の持つエネルギーは凄まじく、それは時に人生を左右するほどの影響力を持つ。実際に触発され、全国区へ駆け上がったオーシャンズ世代の同志はこの漫画をどう読んだのか。男たちは、かく語る。
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