40年以上にわたりバスフィッシングに熱中している反町隆史さん。
前編ではこだわりの道具に対する“信頼”と“普遍性”について話してくれた。
そして話題は気のおけない仲間たちへと広がる。
世界記録への思いを共有するかけがえのない仲間の存在
信頼という意味では、反町の琵琶湖でのフィッシングライフには欠かせない5人のアングラーがいる(詳細は後編にて)。気のおけない仲間たち。話題が5人のことに及ぶと、さらに相好を崩す。
「遊びこそ、特に釣りに関しては、本気で取り組むことでまた違った楽しさが見えてくると思っている。それを理解してくれるのが、まさに5人の方たちで、みんな職種も住んでいるところもバラバラだけど、釣りに対する思いは同じ。
僕のワールドレコードにかける思いも知ってくれていて、本当によくしてくれますし、何より一緒にいてすごく居心地がいいんだよね」。
このままの状態で仲間と一緒に釣りを心底楽しみたい
小学5年生の頃、仲間同士で始めたバスフィッシング。反町少年にとって初めての釣り道具は、お年玉や誕生日、クリスマスなどから少しずつお金を貯めて、やっとの思いで揃えた。以来、道具に対する思いは人一倍強い。
そうしてスタートした釣りとの関わりだが、仲間は年々脱落していき、いつしかひとりになった。苦笑いを浮かべながら当時を振り返る。
「子供の頃はサッカーをやっていた。春夏は練習や遠征が入っていたこともあって、釣りに出られる時季が冬だけしかなくて。寒いなか一日中手をかじかませながら釣っていたよ。でも全然釣れない(笑)。それもそうだよね。釣り方の情報とかルアーとかは、その当時の僕には限られたものしかなかったからね」。
そう話していると、釣りをしていた反町のロッドに魚の当たりが伝わった。大きな魚体が水しぶきをあげ、格闘すること数分。反町は手慣れた様子でボートの近くまで来たバスを掴み、ルアーを取ろうとする。
そのとき、バスは大暴れし、釣り針の返しごと反町の指に突き刺さった。素人目にも病院に行かないと指から針が外せないほど深く刺さっているが、「こんなのよくあることだし、自分で処置できるから大丈夫。撮影を続けようよ」、そして「今回は釣れたね」と、あの無邪気な笑顔ではしゃぐ。
別れ際、今後琵琶湖でバスフィッシグをやっていくうえで、ワールドレコード以外にチャレンジしてみたいことはあるかと投げかけてみた。「ないない!」と、てらいもなく答える。
「今の仲間との関係がそのままの状態でずっと続いていけば、それだけで大満足だから」。
このとき、反町にとって仲間との絆こそが最高の道具だということがはっきりとわかった。何よりも楽しそうな笑顔が、それを物語っていた。
TAKAY=写真 池上 豪(NICOLASHKA)=ヘアメイク オオサワ系=取材・文