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2021.07.23

時計

「ゼニス」エル・プリメロの現在進行形。そこに詰まった、本物だけが持つ魅力

ゼニスのエル・プリメロは、誕生から半世紀以上経った今も最高位のクロノグラフムーブメントと讃えられる。

当時としては画期的な毎時3万6000振動のハイビートを備え、その歴史に秘めた再生のエピソードも感動的だ。だがしかし、ヘリテージにばかり目を向けていると見誤ることになる。
むしろその本質は、革新性に磨きをかけ、品質と信頼性の向上に努めてきた歴史にこそある。新作はそんな魅力を凝縮した。
進化を続けるクロノグラフの金字塔。品質と信頼性の向上に努める「ゼニス」の歴史が凝縮した一本
[クロノマスター スポーツ]SSケース、41mm径、自動巻き。116万6000円/ゼニス 03-3575-5861
黒いセラミックスベゼルを装備したクロノグラフは一見今のトレンドを追ったかのように思えるかもしれない。
だがそこにはゼニスの歴代クロノグラフの意匠がちりばめられている。
※撮影した時計はサンプルのため、実機とはローターのデザインが若干異なります。
ざっと挙げると1960年代中頃の「A277」がベゼルに記したドット、’69年の「A386」が採用したシャープなラグ、異なる仕上げの2トーンのブレスレットは’70年代にイタリアのリテーラー名から付けられた「デルーカ」から、さらに’95年の「レインボー」が採用したタキメーターベゼルといったように、それぞれのシグネチャーが時を超えて融合する。

そしてその内には、センター秒針で10分の1秒を計測し、パワーリザーブも60時間に延ばした進化系エル・プリメロを搭載する。
たとえトレンドのスタイルのように見えても、培ってきた本物の歴史と唯一無二の機能を備えている。そこに他のクロノグラフとは一線を画する存在感を宿すのだ。
1970年代クオーツが主流になり、エル・プリメロも絶滅の危機に。このとき、廃棄を指示された設計図や工作機械を当時の技術者が密かにこの屋根裏部屋に隠した。そしてブランドの復興とともに、エル・プリメロは蘇ったのだ。
エル・プリメロはさらなる完成度を目指して、今も素材や設計の最適化を続ける。決してゴールはない。その開発精神と情熱がエル・プリメロの本懐であり、だからこそゼニスのコアコンピタンスになりうるのだ。
躍動感ある針の動きは、見る者に感動を与え、単なる計測の機能を超えたクロノグラフの素晴らしさを教えてくれるだろう。
 
※本文中における素材の略称:SS=ステンレススチール
作木正之介=写真 柴田 充、髙村将司、オオサワ系、まつあみ 靖、戸叶庸之=文


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