OCEANS

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小さい頃から飽き性で、将来就きたい仕事も見つからない。結局、一生やって行けると思ったのはメイクだった。お母さんも背中を押してくれて、美容系専門学校のメイクコースに進学した。
「コロナの影響で休校になっちゃって上京したのは去年の6月。今は登校するのが週3、リモートが週2という感じです。メイクの授業も人の顔にやるのはNGで、変なマスクの人形みたいな子にやっています」。
「マスクだと同じ顔にしかならなくて……」と悩みを打ち明けるギミさん。
部屋のドレッサーにも私物のメイク道具が山のようにあり、すべてを大切に扱っている。
最近のお気に入りは友だちからもらったチーク。
ちなみに、今日のメイクの概要も聞いた。
「自分の眉毛に眉毛用のマスカラをちょっと足す。まつげは自前。自分にいちばん合う感じ。アイシャドウは目の下の端っこに塗るのがお気に入り。アイラインはチャコールブラウン、沖縄顔なので強くなり過ぎないように。リップは落ち着いたピンクと唇の内側にコーラルピンクみたいな色の重ね塗り。ほっぺは普通のチークです」。
この日は珍しく「イサ タコ」自慢の沖縄3人娘が揃うタイミングだった。
左から、中部・読谷村出身のキミカさん、南部・豊見城市出身のギミさん、北部・名護市出身で店長のシマさん。
沖縄本島の主要エリアを制覇するメンバーだ。ここで、ギミさんが「沖縄あるある」を教えてくれた。
「那覇近辺って方言はあまり強くないけど、服のTシャツもトレーナーも全部『履く』って言うんです。標準語だと思っていたので、こっちでできた友だちに指摘されてびっくりしました(笑)」。
厨房で料理の腕を振るうのは店長のシマさん。ギミさんは「賄いで作っていただく沖縄の『フーチャンプルー定食』が最高なんです」と目を輝かせる。
いわゆる裏メニューだが、店に材料があれば注文できるかも!?
そして、冒頭でご紹介したオーナーとは日下部 勲さん(35歳)。ギミさんって、どんな方ですか?
「最初に面接したときは18歳でしょう。完全に異人種だと思いましたが、物怖じしないし、いったん喋り始めるとシュールな面白さを持っている子です」。
お客さんのファンもじわじわと増えてきたという。
「あ、そうそう。店長のシマちゃんは補聴器を付けているんですが、お客さんからの呼び出しが聞こえないときは、真っ先にフォローしてくれます」。
呼び出し用のピンポンも導入した。
日下部さんいわく、「メニューにソーメンチャンプルーはないし、泡盛も最低限のラインナップ。だから、沖縄居酒屋ではなく『沖縄“風”居酒屋』と呼んでいるんです」。
なお、店名はいさおさんのタコス屋だから「イサ タコ」なのだ。緊急事態宣言期間限定の「晩酌セット」(1000円)も気になるところだ。
宣言が解除されても続けてほしいが「原価割れなんです」と日下部さんは笑う。
というわけで、今回はこだわり抜いた沖縄料理と周囲を笑顔にする看板娘に出会えた。
「卒業後はメイクアップアーティストのアシスタントになるか美容師から始めるか考え中」だというギミさん。最後に、読者へのメッセージをお願いします。
「お待たせしました〜」カット同様、ピースでキメてくれた。
 
【取材協力】
ISA TACO
住所:東京都江東区亀戸2-30-9 アーバンヴィラ1F
電話番号:03-5858-6088
https://twitter.com/kameido_isataco
「看板娘という名の愉悦」Vol.140
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文


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